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2022年 11月 ホワイトニングで歯を白く

 近年、注目を集めているホワイトニングですが、一口にホワイトニングといっても、様々な方法があります。いろいろ情報が氾濫していて混乱しがちですので、今月はそのあたりを整理してみたいと思います。

 

 まず、『ホワイトニング』という言葉ですが、『ホワイトニング』とは意味合い的に歯を白くすること全般を指していいます。前述どおり歯を白くするためには様々な方法がありますが、どういう方法で白くするかによって大きく分けると、以下の3つに分けられます。

  • 歯の表面に付いている色を落とす。
  • 歯本体の色を白くする。
  • 歯の表面を白く覆い隠す

 

一般的なイメージとしては「②歯本体の色を白くする。」のことだと思われがちですし、歯科で「ホワイトニング」というとこちらをさすことが多いですが、状態によっては①で充分な場合や、様々な理由により②が行えない場合に③の方法を用いる場合があります。その人の歯の状態や何を求めているかによって向き不向きがあるのです。

ここで一つ問題だなと感じるのは、昨今の情報の氾濫で、それらの正確な意味や向き不向きが理解されないままに、何らかの「ホワイトニング」が行われ、時として不本意な結果を招いてしまっているのではないかということです。

これには昨今様々な企業からホワイトニング商品が売り出され、どういった効果はなのかよく分からないものや、ホワイトニングで儲けたい企業サイドが各自のホワイトニング製品や技術を宣伝する際にメリットを前面に押し出した誇張的な表現を用いていたり(特に写真の加工技術によっていくらでも色は変えられますので)、またはそういった製品や技術の名称を各自で聞こえの良い勘違いしやすいような名称にしていることも原因かと思われます。

 

我々がよく患者さん方から質問を受けるのは「芸能人の宣伝している歯の白くなる歯磨き粉」や「輸入物のホワイトニング剤」、又は「通販の自宅ホワイトニングセット」などです。

先ず皆さんに知っていて欲しいのは、基本的に薬剤は効果が高いものほど、「薬剤の力が強い=使い方によっては人体の害を及ぼす可能性がある」ということです。

そして、それ程の強い薬剤は薬事法などの法律で規制されており、医薬品の知識のある歯科医師などの専門家の元でしか扱えない、つまり逆に一般に誰でも無規制に手に入るような薬剤は、それ程「効果が強くない」ということになります。

また中には法の目をかいくぐってインターネットで輸入されたような強い薬剤もあるかもしれませんが、「薬剤の力が強い=人体の害を及ぼす可能性」があるということを念頭に置いてください。

企業側の宣伝写真のような効果がでなかったり、何らかの問題が起こることがあってもすべて自己責任です。

 

また最近名称で気になったのは某芸能人の「セラミック矯正しました」といったSNSのニュースです。

耳なじみのない言葉なので、(セラミック製のブラケットを使用した矯正はあるが、矯正歯科では上記のような名称では呼ばない)、読み進めて行くと、どうやら「ポーセレンラミネートベニア」もしくはセラミックの「クラウン」のことではないかと思われました。

ポーセレンラミネートベニア自体はかなり昔からある技術で、主に歯の色を白くする目的で歯の表側の面を一層削ってポーセレン(=セラミック)のパーツを貼り付ける方法ですが(上記③に相当)、パーツを作る際に形を工夫すれば多少の歯並びを誤魔化すことができます。また「クラウン」はいわゆる「被せ」で、表側だけでなく歯の表面全周を削り、セラミックなどで出来た被せで歯の表面を覆い被せる方法でラミネートベニアよりも更に歯の色も形を変えることができます。

歯を一切動かさず、削って形を変えるだけのこういった方法は矯正治療ではありません。

施術サイドが「ポーセレンラミネートベニア」という古くからある分かりにくい名称より、若者に受け入れ易い新しい名称を付けたのかと思われますが、非常に紛らわしい誤解を招く名称だと思います。このSNSを読んだ人が、矯正歯科に行って「セラミック矯正」をしたいと言っても、おそらく全く話が嚙み合わないでしょう。(ポーセレンラミネートベニアのメリットデメリットは後述)

 

では、「何が一番良いのか?」となるのですが、それは各個人によって違って来ると思います。

例えば、先述の芸能人の例で言えば、「歯を削ってしまうことで、将来歯に起こり得る健康上の問題」よりも「芸能人としての将来への成功がかかっている現在すぐにキレイに」のほうが重要であったということでしょう。医療従事者としてやや残念だなとは思いますが、本人がそのメリットデメリット理解した上での選択であれば問題ないと思います。健康と人生の成功の秤は本人にしか決められないものです。

また、各個人の歯の状態によっても向き不向きがあります。歯の色が何によって悪くなっているかで、適した方法が違います。

間違った方法をいくら行っても全く効果がないばかりか、逆に歯を傷めてしまう場合があります。

 

ということで、歯の色について説明していきます。

まず、シンプルにタバコのヤニや茶渋などの色素が歯の表面についている場合。

こちらは基本的に歯磨き粉で磨けば落ちます。磨いているのに落ちないという場合には、歯磨きのやり方に癖がある場合や、色素の多い飲食物の取り方で軽減できる場合が多いので、当院では研磨剤で落としたあとに、合わせてそういった保健指導も行います。歯の色が茶渋かどうかの判断は我々が診ればすぐに分かります。

ただし、こういった茶渋等の外来の色素は表面だけでなく、ごくわずかずつではありますが歯の内部の象牙質まで浸透していきます。これが加齢による変色ともいわれ、生きていて口から飲食する限り大なり小なり必ず起こります。内部に浸透した色素は研磨剤では落とすことは出来ませんので、下記の薬剤を使用したホワイトニングの適応になります。

施術前

加齢による変色

右上前歯は10年以上前に作った挿し歯。挿し歯の色は当時と変わらないが、周囲の歯が年齢とともに黄ばんできた状態。

 

 

次に生まれ持った歯本体の色についてですが、歯の色はまず、歯の本体の象牙質とエナメル質の色調や透明度によって決定します。歯の中身である象牙質は元々少し黄味を帯びたアイボリー色をしており、その表面に半透明のエナメル質が覆っています。象牙質の色が白ければ歯の色は白く、黄味が濃ければは黄色っぽい歯ということにはなるのですが、同じくらいの象牙質の場合、エナメル質の透明度が高かったり厚みが薄い程、中身の象牙質が透けて見えるので歯の色は濃く見えます。

        

 

ここで前述の「歯の白くなる歯磨き粉」ですが、こういったものの中には歯の表面の色素であるヤニや茶渋を落とすために、多量の研磨剤を配合しているものがあます。確かにたばこやお茶などの色素で歯の色がくすんでいる場合は研磨剤で落とすだけで充分きれいになりますが、表面の色素が落ちた後にも日常的に使いすぎていると、エナメル質が磨耗して薄くなり、かえって象牙質の黄味が強く見えてしまうことがあります。またエナメル質が薄くなるほど外来の色素の内部への浸透も起こりやすくなります。

研磨剤だけでなく酵素などが配合されていて、歯の表面の汚れや色素を浮かせて落としやすくする作用があるものもありますが、基本的に歯磨き粉では歯本体の色を白くすることはできません。

 

また、本来半透明であるエナメル質の色にムラがあり、白濁していたり茶色く着色していたりする場合もあります。

斑状歯やエナメル形成不全などの原因のはっきりしたものもありますが、肌のホクロのように、たまたま出来ているといった場合も多いです。

他にはテトラサイクリン着色と呼ばれる幼少期に服用した抗生物質の副作用で歯全体がグレーっぽい色になっているものや、虫歯や打撲で歯の神経が壊死したなどの場合に歯の内部の神経管から血液などの色素が染み出しできて象牙質の部分からグレーっぽくなることもあります。(この場合は壊死している歯一本のみに限局しており、テトラサイクリンの場合は全体の歯の色が悪くなります)

ホワイトニングを行う際は、そういった歯の色調の具合をみながら着色の原因をさぐり、患者さんのニーズとあわせて実際のホワイトニング法を決めていくことが重要なのです。

 

  元々の歯の色調

       歯の色は個人差があります。元々全体に色の濃い方や犬歯や小臼歯が特に濃い場合

     もあります。

   加齢による着色

       長年にわたり摂取した食べ物や嗜好品の色素は年齢経過とともに歯の内側にも浸透

      していきます。大なり小なり全ての方におこる現象です。

   斑状歯(フッ素症)

        生後6ヶ月から5歳くらいまでの歯の発生期にフッ化物を過剰摂取すると歯に褐色の

      斑点や染みができます。中等度の症例では、エナメル質にいくつかの白い点や小さな

      孔ができます。より重症だと、茶色い染みのような着色があらわれます。井戸水など

      の飲料水に地域的にフッ素を多く含んでいる場合や、うがいがうまく出来ない子供さ

      んでフッ素入りのうがい薬や歯磨き粉をのみこんでしまう癖がある場合に引き起こさ

      れる危険があります。

         

   エナメル形成不全

        エナメル質が出来るときに何らかの問題で、エナメル質に色むらや白斑があらわれる

      ことがあります。

   テトラサイクリン着色歯

       歯が生える前の顎の骨の中で出来かけのときに、何らかの病気でテトラサイクリン

       系の抗生物質を服用した場合に起こる副作用です。骨や歯になじみの良いテトラサ

       イクリンは、歯の内部に沈着して緑色や紫色を帯びたグレーに変色させます。

       テトラサイクリンは太陽の光(紫外線)に反応する為、 歯が生えた後に、紫外線を

       浴びると前歯を中心に褐色や紫色に歯の変色が進んでいきます。軽度の場合と重度

       の場合で対処がかわってきます。

   神経が死んでいる歯の変色

        虫歯や打撲で歯の神経が死んでしまうと歯の芯の神経があった部分から血液などが染

       み出し、何年か経って徐々に黒っぽく変色することがあります。内側の深い部分から

       の着色なので、外側から薬剤を浸透させるホワイトニングだけではなかなか効果が出

       ません。

              

 

ホワイトニングの方法と適応症

では実際にどんなホワイトニング法があり、何に適しているか見ていきましょう。前述の通り、大別すると以下の3つになります。

  • 歯の表面に付いている色を落とす。
  • 歯本体の色を白くする。
  • 歯の表面を白く覆い隠す

 

① 歯の表面に付いている色を落とす方法

○ポリッシング

 歯科用の研磨剤とブラシやラバーカップなどを使って機械的に磨きます。5~10分程度で出来ますが、細かい隙間などの着色は手用スケーラーを使う場合がありもう少し時間がかかることもあります。タバコのヤニ等はこれだけで充分にキレイになりますので、以下の薬剤を用いろホワイトニングの際にはカウンセリングの後に必ずポリッシング行います。ポリッシングのみで充分な満足が得らない場合、後は個人の歯の本体の色が問題になりますので、その他の最適なホワイトニング法を提案します。

  <適応症>

   茶渋・タバコのヤニなど歯の表面についた色素

     ポリッシング前             ポリッシング後

         

    

 

② 歯本体の色を白くする。

歯本体の色を白くするには歯に薬剤を浸透させて漂白する方法がとられます。歯の表面に薬剤を置いて浸透させる方法(これが歯科でいう狭義での「ホワイトニング」です)と歯髄壊死などの場合に歯の内部から浸透させる方法(ウォーキングブリーチ)があります。表面から行う「ホワイトニング」は薬剤の種類によって「オフィスホワイトニング」と「ホームホワイトニング」のふたつに分けられます。

 

○オフィスホワイトニング

 歯科医院で施術。歯の表面に薬剤を塗布し専用の機械で光や熱を照射し、薬剤を一気に歯に浸透させる方法。

通販のキットやエステサロン的なお店で似たような光を当てるものがあるようですが、歯科医師の常駐しない状況では使用できる薬剤には制限があり、効果の高い薬剤は使用できません。

歯科医院で使用する薬剤は主成分が過酸化水素でできており、歯茎などに付かないように注意して施術しなければなりません。1~2時間程度で終了するので、ウェディングなどの即効性を求める方には適しています。

過酸化水素はエナメル質に限局して作用するので、象牙質までは効果は及ばず、後戻りが早いのが難点です。また仕上がりはやや透明感の低いマットな色調になります。低濃度過酸化水素に酸化チタン光触媒が配合されているものは若干象牙質まで作用するようですが、以下の過酸化尿素を用いた。ホームホワイトニングほどの効果は期待できません。

 

○ホームホワイトニング

 光や熱を使用せず時間をかけて薬剤を浸透させる方法。

薬剤を注入した『トレー』と呼ばれる歯全体を覆うカバーを自宅で毎日睡眠時などに一定時間装着して薬剤を歯に浸透させます。薬剤は比較的低濃度の過酸化尿素が主成分ですが、余分な薬剤がお口の中に流出しないよう、このトレーが歯にピッタリあったものであることが重要です。また体質によって薬剤が歯に沁みる知覚過敏症状が出ることがありますので使用法など適切な指導と処置のもとにおこないましょう。

効果としては過酸化尿素は象牙質へも作用しますので自然な白さが得られます。通常の歯質であれば最も効果的なホワイトニング方法といえます。効果が現れるのが1週間前後からと期間がかかりますが、患者さんのニーズに合わせて期間を増減でき、基本は2週間程度ですが、より白さを求める場合は最大4週間程度まで延長できます。象牙質まで効果が及びますのでオフィスホワイトニングにくらべて後戻りしにくく、後戻りした場合でも薬剤のみの購入で、自分で手軽にメンテナンスできるのも利点です。

 

ホームホワイトニングのトレー

 →    

左 右上中切歯は10年以上前に作った挿し歯。挿し歯の色は当時と変わらないが、周囲の歯が年齢とともに黄ばんできた状態。

右 上下ホワイトニング後。歯の色が全体に1トーン明るくなり、挿し歯との差が目立たなくなっている。

 

<適応症>

  元々の歯の色調

  加齢による着色   

  テトラサイクリン着色歯(軽度)

 

○ウォーキングブリーチ

 歯の神経の入っていた歯髄腔に薬剤(高濃度の過酸化水素)をつめて封をした状態で数日間おいて薬剤を浸透させます。これを何度か繰り返しますが、歯の着色が強い場合、完全にもとの色まで戻すのはかなり回数がかかるようです。また、この方法だけで完全には白くならない可能性もあり、他の方法と併せて行ったほうが良い場合もあるようです。

   *歯の状態によっては、歯質が割れやすくなったり、出来ない場合があります。

  <適応症>

    神経が死んでいる歯の変色

 

 

③ 歯の表面を白く覆い隠す方法

○マニキュア(ホワイトコート

 樹脂製のコート材を歯の表面に塗布して光で硬貨させます。一時的な使用を目的に開発されたもので、一ヶ月程度で剥落してきます。色調はやや透明感が低いのと色の数が少ないのがやや難点ですが、処置時間が早いので1回で処置が可能であることと、歯自体への負担がほとんどないのが利点です。

 

○レジンベニア

 マニキュア同様に樹脂材で歯の表面を被いますが、こちらは虫歯の処置にも使用する素材を用いますので、接着性も強く硬さもあるので何年ももちます。色調のバリエーションもマニキュアより豊富で、また硬さがある分、研磨や歯の形を修正することができます。歯を一切削ることなく処置しますので歯への負担はありません。難点としては、樹脂素材は若干の吸水性により年月が経つと少しずつ着色してきます。そういった場合は表面を研磨して着色部分をとったり、部分補修や再ベニアも可能です。処置時間はマニキュアよりはかかりますので当院では1回に1時間程度で2本ずつ行います。下記のポーセレンベニアに比べるとかなり安価にできることと、歯に優しいことが利点です。

     → 

    先述の斑状歯を上の前歯4本レジンベニアした症例

 

○ポーセレンラミネートベニア ・クラウン

ラミネートベニアは歯の表側の面を0.5~1ミリ程度の厚さ削り取り、ポーセレン(セラミック)で出来た板状のパーツを貼り付けます。クラウンの場合は歯の表面全体を削ってポーセレンの被せ(クラウン)を被せます。色調は最も自然に近い透明感のある仕上がりになり、素材的に吸水性も無いので変色もほとんどありません。歯を削った後に歯型をとって技工で製作し、次回装着になりますので、最低2回以上の通院が必要になります。冒頭の芸能人のようにある程度は歯の形を変えることができます。ポーセレンは硬いですが柔軟性がない素材なので破損には注意が必要です。

歯を削って装着しますので、壊れたりはがれたりした場合には歯の内部がむき出しになって虫歯になりますので、かならず再処置する必要があること、歯の寿命が短くりやすい、費用が高額、などがデメリットです(自費診療なので医院によって価格にかなり差があるようですが1歯あたり5~10万円程度。上顎の歯だけで6~8歯必要)

 

 <適応症>

 エナメル形成不全

 テトラサイクリン着色歯(重度)

 斑状歯(フッ素症)

 神経が死んでいる歯の変色