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2014年 10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

前回に続きまして今月も症例のご紹介です。
今回の症例は、42歳 女性 下顎前突の全顎のマルチブラケットによる治療例です。

コチラが初診時

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

歯周病ですでに数本の歯を失っています。また、虫歯で治療中の歯もあります。
具体的にいいますと

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

ここで、歯周病について少し説明しておきましょう。
「歯周病って歯ぐきから血が出るやつでしょ?」、「歯周病で歯が抜けるってどうゆうこと?」とお思いの方も多いと思いますが、一言でいうと歯周病とは「歯ぐきに繁殖した細菌の毒素で歯の周りの骨が溶けていく(骨吸収(こつきゅうしゅう))」病気です。

レントゲンで骨の状態を見てみましょう。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

歯周病による骨吸収が全体に広がっているのがわかります。特に上の前歯の病状が悪く、真ん中の二本は根っこの先まで骨が溶けてしまったため抜けてしまったのです。

ところで、この患者さんの歯並びですが、上の写真で見ると、いわゆる受け口(下顎前突)と呼ばれる歯並びですよね。
しかし、ここにこの患者さんの前歯を失う前の写真があります。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

真ん中の写真を見ていただければわかりますが、もともとは受け口(下顎前突)でなく、叢生、つまり凸凹の歯並びで俗に言う八重歯です。

この患者さんは一般歯科で歯周病の治療を受けており、歯を失ってからは入れ歯を使われていました。やっと歯周病の進行が治まってきたので、失ってしまった前歯をブリッジで補うことになったのですが、咬み合せが悪いために上手くブリッジが出来ないので歯並びを整えてほしいという依頼でした。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

たしかに元の歯と同じ形のブリッジにするのは下顎の歯が間に咬み込んでくるので、両脇の土台になる歯の負担が大きすぎます。また、下顎の歯と当たらないように一列に並んだ形でブリッジを作ると受け口になってしまいます。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

要するに、この症例における、最大の矯正治療の目的は、「逆咬みになっている二本の前歯を下顎の歯より外に出す」ということです。

そこで問題になるのが、その二本の前歯の周りの歯周病です。レントゲンで見ると歯根の先3分の1程度しか骨に埋まっていません。ここまで骨吸収が進んでいると、矯正治療で不用意に過分な力を加えると、すぐにグラグラになって最悪の場合は歯が抜けてしまいます。

地面に棒杭を立てて揺すってみるのをイメージしてみてください。杭が深く埋まっているほど押しても倒れません。反対に埋まり方が浅いと、ちょっと揺らしただけでもすぐにグラグラになって倒れてしまうでしょう。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

この、歯に加わる力ですが、矯正治療だけでなく、物を噛む力もかなりの負担になります。

そもそもこの方の歯並びは凸凹があるわりに隙間がたくさんあります。
本来歯並びの凸凹とは、歯が並ぶ隙間が足らない場合に、なんとか押し合いへしあいして生えようとしておこるものです。おそらくこの方も、もとからこういう歯並びだったのではなく歯周病で骨が溶けていくにしたがって、自分自身の噛む力の負担に耐え切れずに歯が倒れて隙間が開いてきた可能性が考えられます。
(余談ですが、歯周病などで歯がグラグラしたり違和感がある場合に、気になって自分で歯を触ったり揺すったりする方がいますが、絶対にNGです!もっとグラグラになって骨の吸収が早まります)
< 参考トピックス 矯正治療の最大の敵 歯周病 >

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

さてではこの歯を動かすためにはどうしたらよいのでしょう?

注意すべきポイントは、2つ
①下顎の歯が当たって歯が揺らされるのを出来るだけ抑える
②歯が傾斜しないように弱い力でゆっくり動かす

ポイント①の「下の歯が当たる」というのはつまり、内側に入っている前歯を外側に出す際に外に向かって移動させていくわけですが、噛むたびに下顎の前歯があたって押し戻されようとします。外に出す矯正の力と内に戻す咬み合せの力で歯が前後に揺さぶられることになり、コレは歯にとって大変な負担になります。前述のように歯が揺さぶられると歯の周りの骨の吸収が進行して、最悪の場合抜けてしまいます。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

ポイント②の「歯が傾斜しないように」というのは、歯というのは移動させる際に単純に力をかけただけでは、傾斜しながら移動するのです。特にこのように歯周病で骨の量が減っている場合、比較的弱い力でもすぐに動きますが、その分大きく傾斜します。

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

こうならないためには力の方向と強さに細心の注意が必要であり、特殊な設計が必要になってきます。

最後にもうひとつ大きな問題があります。矯正治療中に入れ歯の部分をどうするか、という問題です。
既存の入れ歯は犬歯に固定するように作られていましたが、もちろん矯正では犬歯も動かしますので、固定できません。そもそも矯正中は日々歯並びが変化していくわけですので、入れ歯自体歯を動かす邪魔になります。
通常こういう場合すぐ隣の歯の接着剤で仮固定のブリッジを作ったりするのですが、ブリッジは上記の理由で不可能。
また固定する歯もすぐ隣の歯は骨吸収がかなり進んでいるので負担が大きすぎます、、、。

というわけで、数々の問題をはらんだ症例ですが、2年10ヶ月後

 

2014年10月 症例 入れ歯と歯周病と矯正治療 1

 

けっして全部抜いて入れ歯にしたわけではありませんよ(笑) 
さて、実際の治療がどのような経過ですすんでいったかは、以下次回!!

 


治療データ詳細

主訴:受け口   診断名:骨格性下顎前突  年齢:42y7m  

治療装置:マルチブラケット装置 抜歯部位:非抜歯  

治療期間:2年10か月 治療費:矯正管理料として50万円(検査料・処置料別途)

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について:

① 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~12 週間で慣れることが多いです。 ② 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。 ③ 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重 要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。 ④ 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まります ので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。 ⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がること があります。 ⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。 ⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。 ⑧ 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。 ⑨ 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあり ます。 ⑩ 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。 ⑪ 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。 ⑫ 矯正装置を誤飲する可能性があります。 ⑬ 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する 可能性があります。 ⑭ 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。 ⑮ 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物) などをやりなおす可能性があります。 ⑯ あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。 ⑰ 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。 ⑱ 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。