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2014年 9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

さて、今月は久しぶりに症例のご紹介です。
今回の症例は、56歳 女性 下顎前突の全顎のマルチブラケットによる治療例です。
まずは、百聞は一見に如かず、治療前後の写真をご覧ください。

 

<治療前 H24.9.7>

治療前 H24.9.7

 

治療前 H24.9.7

 

<治療後 H26.4.25>

治療後 H26.4.25

 

治療後 H26.4.25

 

劇的な変化だと思いませんか?
年齢的に、虫歯による治療痕や歯の破損&欠損などが多く、色々大変なこともありましたが、この患者さんの素晴らしいところは、歯周病による骨吸収がほとんどなく、顎の骨がとてもしっかりしていたという点です。

具体的にいいますと

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

という状態で、特にかぶせ④と⑥は、もともと歯の位置がもっとずれていたところに生えていたはずですが、 被せを作るときになんとか歯列納まるように作られたらしく、本来の歯の根っことかぶせの向き合っておらず形も不自然なものでした。ブリッジの部分も連結された状態では歯並びを動かせないため、分割する必要があります。
他にも歯科用の樹脂による修復の形態不良などもあり、これらは治療を進める過程で少しずつ治療修正していきました。

ところで、このように歯に注目してみるといろいろ大変そうなのですが、骨に関しては素晴らしく良い状態です。
下の奥歯のブリッジの部分など、ややもすれば矯正治療中に矯正力の負担に負けてぐらぐらしてきたりするものですが、この方の場合は、治療中一貫してびくともしませんでした。
以下のレントゲンは歯周病で骨の減っている方のものですが、見比べると奥歯の辺りの歯と骨の関係がずいぶん違うのがおわかりかと思います。(参照 歯周病は歯茎が溶ける)

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

とはいうものの、複雑に咬み合った前歯や、補綴物(かぶせやブリッジ)など注意すべき点は多く、少しずつ治療を進めていきました。

以下順を追ってみていきましょう。
まず、上下逆咬みの受け口になっている咬み合わせを治さなければなりません。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

上下の前歯は、奥歯で咬みあわせた状態では本来は上の前歯が外に出ていなければなりません。
しかし、この状態で上の前歯を外に押しても、下の前歯が、外からがっちり押さえ込んでいるので、噛むたびに押し戻されてしまいます。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

そこで前歯の上下の重なりを浅くして、上の前歯が外に出やすくしてやります。
上下の歯のマルチブラケットを装着し、下の前歯には咬み込みが浅くなるように特殊なワイヤーがセットされています。
上の写真と比べると重なりが浅くなり始めているのがわかりますでしょうか?
左下の奥歯のブリッジは前後の歯に分割しています。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

8ヵ月後。奥歯をしっかり咬み合わせた状態ですが、上下の前歯の重なりはほとんどなくなり、その分上の前歯は以前より外に出てきました。
咬み合わせを浅くするのと平行して、歯並びの凸凹も治しているので、上下とも前歯がまっすぐ一列に並んで来ています。

 

では、凸凹の治っていく様子を別の角度から見てみましょう。上記のようにかぶせの入っている歯が多いので、随時修理や作り直しを行いながらの治療でした。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

まずは大きすぎる右上の二番目のかぶせの作り直しをしなければなりません。
(画像上では左上、上述のかぶせ④)
矯正治療後のかみ合わせに合うようにするため、治療中は仮のかぶせにします。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

小さめの仮のかぶせにしましたが、歯が並ぶ隙間が足らないのでまだ装置は着けられません。
奥歯の金属のかぶせの部分には接着剤が付にくいのでバンドというリングを歯にはめ込んで装置をつけなくてはなりません。青いゴムはその準備です。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

だいぶ、並んできました。歯並びに沿ってワイヤーが波打っていますが、形状記憶合金なので、その力で歯がキレイなアーチ型にならべられていきます。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

完成です。右上の二番目の歯は歯科用の樹脂でほぼ本来のサイズに修復しました。
左上の一番前の歯のかぶせと、右下の折れていた前歯も同様に樹脂で修復しました。

 

2014年9月 56歳 女性 下顎前突 全顎マルチブラケット症例

 

左上の四番目のかぶせも歯の頭と根の方向があっていなかったので、現在は仮のかぶせになっています。咬みあわせが落ち着いてから、左下のブリッジと共に再製予定です。

 

歯並びの矯正というと、「子供しかできない」とか「今さらもう、、、」とか成人になり年齢があがるほど、腰がひけるものですが、この方のように年齢によって治療が出来ないということはありません。期間的にも、一般的な同様の歯列の治療期間が約二年から二年半程度のところ、この方の場合では1年七ヶ月ですので、むしろ早いほうです。

日本人の平均寿命が80歳を超えた現代(男性平均寿命80歳、女性87歳)、先述のように50歳で「今さらもう、、、」といわれた方も人生はまだもう30年もあるのです。「もっと若いうちにしておけばよかった、、、」と後ろを向いて生きるよりは、今出来ることがあるならば常に前に向いて進む人生って素敵だと思いませんか?


治療データ詳細

主訴:受け口  診断名:骨格性下顎前突、叢生  年齢:56y6m  

治療装置:マルチブラケット装置  抜歯部位:非抜歯  

治療期間:1年6か月 治療費:矯正管理料として50万円(検査料・処置料別途)

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について:

① 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~12 週間で慣れることが多いです。 ② 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。 ③ 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重 要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。 ④ 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まります ので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。 ⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がること があります。 ⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。 ⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。 ⑧ 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。 ⑨ 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあり ます。 ⑩ 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。 ⑪ 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。 ⑫ 矯正装置を誤飲する可能性があります。 ⑬ 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する 可能性があります。 ⑭ 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。 ⑮ 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物) などをやりなおす可能性があります。 ⑯ あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。 ⑰ 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。 ⑱ 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。