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vol.2 医療費控除のごあんない

そろそろ確定申告の季節ですね。確定申告とは、一年間の収入を国に申告して、所得税の金額を決めてもらう手続きですが、サラリーマンのお家では給料から天引きされているので、普段あまり意識してないのではないでしょうか。

しかし、矯正治療を受けられている方は医療費控除を受けるためにちょっと頑張らないといけない季節です。

医療費控除は、医療費がたくさんかかった家庭に対して所得税を一部返してもらえるという制度ですが、医療費控除は勤務先の年末調整では手続きしてくれないので、自力で申告しなければなりません。自営業などで税理士さんと個人的に契約されている場合はお任せすることも可能ですが、かかった医療費の明細はきちんと把握してお伝えする必要があります。

 

矯正歯科治療の場合、自費診療ですが医療費控除の対象になります。確定申告することによって控除対象になる分の医療費の金額を課税所得(税金をかけられる収入の金額)から控除してもらえるので、所得税の額が下がります。サラリーマンで給料から所得税が天引きされている場合は税金の還付を受けることができるのです。これは所得税が還付されるだけでなく、税金をかけられる収入の金額が下がることになるので、翌年の住民税も安くなります。慣れないと面倒くさいと思いがちですが、節税効果の高い制度ですので是非活用しましょう。

 

以下に医療費控除の確定申告のポイントをまとめてみましたので、ご参考になさってください。

ただし、気を付けたいのは、還付されるのは納めた所得税の一部ですので、そもそも所得税を納めてなければ還付はありませんし、高額医療費のように医療費自体が返ってくるわけではありませんのでご注意ください。(当院の場合、所得税率10%の場合で数千円~数万円程度)

 

申告期間

確定申告の申告期間は原則、申告対象期間の翌年2月16日から3月15日までです。土日祝は税務署がお休みですので、2025年の確定申告の申告期間は、2月17日から3月17日までになります。ただし、医療費控除は税金が戻ってくる還付申告にあたるため、1月1日から申告できます。

また通常の確定申告の期間内に申告できなくても、5年以内であれば、さかのぼって申告できます。つまり2024年に支払った医療費の控除は、2025年1月1日~2029年12月31日まで申告が可能です。ただし5年分を合算することはできませんので年単位で5回分申告することになります。

 

医療費控除の対象

税金を納める本人と「生計を一にする親族」が1年間(11日~1231日)に支払った全員分の医療費の合算が10万円を超えている総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%場合、医療費控除を受けることができます。

支払った医療費-10万円総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)=医療費控除額(上限200万円)

※総所得金額とは給与所得やその他の事業や配当などの所得の合算です。給与所得のみの方は給与収入から給与所得控除を引いた額になります。(源泉徴収票で確認しましょう。)

 

医療費控除の対象となるのは「治療を目的とした通院・入院にかかる費用」です。治療を目的として支払った費用であれば保険適用外でも医療費控除の対象になります。美容目的や健康増進目的の費用となるホワイトニング費用や歯ブラシ代は対象外になります。

矯正治療は子どもの場合はもちろん対象になりますし、成人でも健康回復のための治療とみなされる場合は対象となります。矯正治療も美容目的とみなされると対象外となりますので、診断書が必要な場合はお申し出ください。(当院では診断書の手数料はいただいておりません。)

また、治療を目的とした通院・入院にかかった交通費も医療費控除の対象とできますが、これは基本的に公共機関を利用した場合の費用を指します。タクシー代(急を要する場合や公共機関を利用できない場合を除く)や自家用車のガソリン代や駐車代は含まれません。交通費は通院した日にちと金額をきちんとメモしておきましょう

 

ポイント

・医療費はその年の1月1日から12月31日までの間に支払い済であること。(振込の場合は振り込んだ日にちがその期間内であること。)未払いの医療費は支払った年の医療費控除の対象になります。

・医療費控除は所得税の控除です。そもそもの所得がない場合や、住宅ローン控除雑損控除などの大きい控除で課税所得がゼロになる場合は、還付申告もできません。可能ならば医療費の支払い時期をずらすか「生計を一にする親族」のうち課税所得のある方で申告しましょう。

課税所得とは、給与所得、事業所得、不動産所得、退職所得金額などの様々な一年間で得た収入の合計から、経費や所得控除(社会保険料控除、基礎控除、扶養控除など)を差し引いた額で実際に所得税をかけられる所得です。収入=所得ではありません。給与所得者の場合は源泉徴収票や年末調整通知書で確認ください。

所得 

 収入金額から必要経費を差し引いた金額

給与所得 

 給与収入から給与所得控除を引いた額

総所得金額等 

 給与所得、事業所得、不動産所得、退職所得金額などのすべての所得金額合計。

※収入が給与所得のみの方は給与所得控除のみ引いた、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」。所得控除を引く前の金額

課税所得 

 すべての所得金額から所得控除額を差し引いた額 No.1000 所得税のしくみ|国税庁

「生計を一にする親族」とは、生活費などを共有している親族が対象です。必ずしも同居している必要はなく、仕送りをしている場合や子ども・親などの医療費を負担している場合も、医療費控除の対象です。共働きの夫婦など、扶養ではない場合でも「生計を一にする親族」の場合は控除の対象です。還付額は所得税の税率で計算されますので、「生計を一にする親族」のうち税率の高い方が申告するほうが還付額が高くなります。

 

No.2260 所得税の税率|国税庁

 

課税される所得金額

税率

 

1,000 から 1,949,000円まで

5%

 

1,950,000 から 3,299,000円まで

10%

 

3,300,000 から 6,949,000円まで

20%

 

6,950,000 から 8,999,000円まで

23%

 

9,000,000 から 17,999,000円まで

33%

 

18,000,000 から 39,999,000円まで

40%

 

40,000,000 以上

45%

 

 

医療費控除の額が還付されるわけではありません。医療費控除額×所得税率=還付される金額です。所得税率は課税所得によって決まりますので、上の表を参考にしてください。

課税所得300万円の方が矯正治療や交通事故の治療などで、「生計を一にする親族」の医療費合計が一年間に80万円かった場合

医療費控除額70万円(=医療費80万円―10万円)×所得税率10%(所得税率下表参照)=還付額7万円

*実際の還付額は様々な控除や減税によって左右されますので、あくまでも概算として参考になさってください。

 

・事故で保険金がおりた場合は保険金を除いた額で計算しましょう。(治療中の矯正装置が事故で壊れた場合などで保険会社から医療側に証明書などの記入を求められた場合はご相談ください。)

課税所得300万円の方が医療費が一年間に80万円かかり、保険金が20万円降りた場合

医療費控除額50万円(=医療費80万円ー10万円ー保険金20万円)×所得税率10%=還付額5万円

*実際の還付額は様々な控除や減税によって左右されますので、あくまでも概算として参考になさってください。

・保険会社からの補填でも、がん診断給付金などの疾病の診断により給付されるものは上記のように引く必要はありません。また、保険会社の給付額は給付対象ごとに計算します。

がんの治療費15万円 保険会社からの入院給付金20万円 がん診断給付金100万円 歯列矯正治療費50万円の場合

かかった医療費: がんの治療費15万円+歯列矯正治療費50万円=65万円

保険会社からの給付金: 入院給付金20万円 がん診断給付金100万円=115万円

65万円ー115万円ー10万円=医療費控除…とはならず。

 

がんの治療費: 15万円ー入院給付金20万円=0円

※がんの医療費は保険で補填されて0円とする。ー5万円とは計算しない

※がん診断給付金100万円は医療費の補填でないので、引かなくてよい

歯列矯正治療費50万円+がんの治療費0円ー10万円=医療費控除額40万円

・医療費控除は支払った医療費-10万円総所得金額等200万円までの人は総所得金額等5%)=医療費控除額になりますので、医療費が10万円に満たない場合は、上記の「生計を一にする親族」の内に総所得金額等が200万円未満の人がいればその方が申請すれば、10万円以下の医療費でも医療費控除できる場合があります。

総所得金額等150万円の方の医療費合計が一年間に9万円かった場合

医療費9万円ー75000円(150万円の5%)=医療費控除額15000円

医療費控除額15000円×所得税率5%還付額750円

*実際の還付額は様々な控除や減税によって左右されますので、あくまでも概算として参考になさってください。

・医療費控除の上限額は200万円までです。上限を超えた場合、いくら医療費が多くても控除できるのは200万円までです。そういった場合は、可能であれば治療費の支払いの年をずらすか、妻や祖父など他の「生計を一にする親族」で分けて申請するとよいでしょう。

・住民税は前年の課税所得をもとに計算されますので、医療費控除の申告によって課税所得が下がれば、住民税の額もさがります。

 

申告方法

インターネット・郵送・税務署に直接行くといった3通りの申告方法があります。

インターネットのe-Taxなら自宅でできますので手軽ですが、専門用語が難しく、どこにどう記載すればよいのかよくわからないといった場合は確定申告会場に直接行くのが確実かもしれません。確定申告会は毎年確定申告期間中に各税務署や倉敷ですとイオンモール倉敷の2Fイオンホールで行われます。ただし基本的に税務署もイオンも平日のみで、整理券や予約が必要になりますので、事前に以下のページからご確認ください。申し込みは10日前から2日前までです。

確定申告会場へ来場をお考えの方へ|令和6年分 確定申告特集

イオンモール倉敷公式ホームページ :: 令和6年分 倉敷税務署 確定申告会場

どうしても平日は行けない方は 一部の税務署では、令和7年は3月2日(日)に限り、確定申告の相談・申告書の受付を行います。

令和7年3月2日(日)に確定申告の相談等を行う税務署|国税庁

確定申告期間の項目にも書きましたが、医療費控除の申告は確定申告期間中以外でもできますので、期間中以外で申告する場合はe-Taxか税務署にご相談ください。e-Taxで行う場合はこちらからどうぞ

確定申告書等の作成|令和6年分 確定申告特集

 

必要な書類

・確定申告書 

※税務署でもらうか国税庁のホームページからダウンロードしましょう。確定申告書(令和5年分以前用)|国税庁

※e-Taxで行う場合はこちらからどうぞ 確定申告書等の作成|令和6年分 確定申告特集

・医療費控除の明細書 【参照】国税庁:医療費控除の明細書

・医療費通知(医療費のお知らせ)(原本を添付)

※健康保険組合などから交付を受けた医療費通知を添付する場合、医療費控除の明細書の記載を簡略化できます。

・医療費の領収書

※領収書や源泉徴収票は提出・添付する必要はありませんが、明細書や申告書を作成する上で必要です。

※領収書は税務署から提示を求められる場合があるため5年間保管してください。

※当院の領収書はレシートタイプですが、申告には問題ありません。紛失した場合は支払証明書を発行致しますのでご相談ください。

・源泉徴収票または収入がわかる書類

・銀行口座がわかるもの 

※還付金の振込先になります。

・マイナンバーカード

※マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーを確認できる書類(通知カードや住民票の写しなど)+身元確認書類(運転免許証や健康保険証など)が必要です。

 

 

以上、医療費控除についてのアレコレを書いててまいりましたが、今回このトピックスを書くにあたり、改めて税金について調べれば調べるほど色々複雑かつ難解な事柄が多く、書いてはいるものの完全には理解しきれていないかもしれません。間違った箇所や認識の違う箇所などあればご指摘いただければ幸いです。

なお、外部のサイトではありますが、医療費控除の計算高精度計算サイト というカシオ計算機株式会社のサイトに計算シミュレーターがありましたので、目安になるかと思います。ただし税金の計算は様々控除や減税措置が絡み合っているので、実際の還付額はやってみないと分からないというのが正解かと思います。あくまでも概算として参考になさってください。

その他、詳細は、国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」をご確認ください。