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2021年 5月 知っていますか?顎関節症2

さて、先月から顎関節症についてお話していますが、まずはおさらいしておきましょう。

「顎関節症」とは、

・顎関節から音がする

・顎が開きにくい・閉じにくい

・顎関節や周りの筋肉に痛みがある

 上記の症状がひとつ、または複数、継続的にある状態を指す言葉で、かなり広い範囲の言葉です。 ですので、かならずしも「顎関節症」=「即治療が必要」というわけではなく、顎に音がするだけで実害のないものや、特に悪化することなく自然に治まるものも含まれます。

もちろん、中には痛みや開口障害などがあり積極的な治療が必要な場合もありますが、安易に歯を削ったりするような不可逆的な治療(一度行うと元に戻せない治療)は要注意というのが、まずひとつ。 (マウスピースや筋肉のストレッチやマッサージなどの運動療法でも改善が見られず、明らかに咬合に異常が見られた場合に、はじめて咬合調整を行う。)

 

また、顎関節症の原因として、ストレスや習慣による、歯ぎしり・くいしばり・歯列接触癖などといった顎周りの筋肉の過緊張が大きいといったお話でした。

 

ところで、皆さんが、「もしかして顎関節症?」と気になる場合のもっとも一般的な症状として『顎関節音』があります。 口をあけるときに「クリッ」となる、閉じるときにカクッとなる、または咬んだときに「ゴリゴリ」なるなど、人によっていくつかパターンがあります。そもそもなぜこの音がするのか、何を意味しているのかを見ていきましょう。

 

以下の図のように、顎の関節は下顎の骨の上端の突起が、頭蓋骨の側面の耳のやや手前にあるくぼみにはまっている形になっています。突起とくぼみの間には『関節円板』と呼ばれる軟骨があり、クッションの役割を果たしています。

 

     

 

 お口を開閉するときは、周囲の筋肉に下顎の骨が引っ張られて、このくぼみの中で下顎の突起が動きます。 このとき正常であれば、関節円板も一緒に動くのですが、うまく動かず関節円板がずれると「クリッ」という音がするのです。

       

 

 この「クリッ」という音はクリック音と呼ばれクリッとなる動きをクリッキングといいます。 口を開けるときにずれても、閉じるときに戻ればまだ良いのですが、円板が前または後方にずれたままになる場合もあります。こうなると下顎が前(または後ろ)に動こうとしても、円板が邪魔になってうまくスライドできず、口が閉じにくい・開けにくいといった障害がおこってきます。

 

通常、お口の開く量としては、3横指(指を横に3本並べた幅)開けば問題ありません。 顎関節症で開口障害が起こった場合、ひどい場合だとほんの数ミリくらいしか開かなくなることもあります。

 

                  

 

また、こういったクリッキングではなく、ゴリゴリとかジャリジャリというような音(クレピタス音)がする場合は円板がずれたままで顎を開閉している状態で、骨同士がすりあわさって出る音です。

人間の身体は意外と適応力が高いので、ずれっぱなしでも痛みが無く、本人の気づかない場合があるのです。

しかし、この状態は骨への負担が高く、食いしばりなどの強い圧力がプラスされると骨が磨り減ってしいます。これも意外と身体の適応力によって、まったく問題を感じない人も少なくないのですが、あまり好ましい状態ではありませんので、いずれにしても、上記のような顎の関節から音がする場合、以下のことに気をつけて、顎関節の負担になるようなことを避けた方が良いでしょう。

 

*顎関節症を悪化させやすいので気をつけるべきこと

 ・音がするからといって、気になってわざと音がなるような動きをさせたりしない

 ・顎を後ろや横に圧迫するような頬杖をつかない

 ・歯ぎしり・くいしばり

 ・物を噛むとき以外、歯を噛みあわせない(TCH)

 

特に一つ目のわざと音を鳴らしてしまうのは、気になりだすと誰もがやりがちなことです。しかし、こういったクリッキングは軟骨である関節円板を強くこすっている状態になりますので、あまり頻繁に行うと関節円板が磨り減ってしまい、今度は骨どうしがすりあわされる状態に進みやすくなります。

また、頬杖・食いしばりといった日常の習癖は自分で意識してやめないかぎり、年単位の長期にわたって続きます。もちろん一日中行っているわけではありませんが、10年20年と続いていくうちに少しずつ関節円板や骨の磨り減りがおこってきます。

       

 

 

ただし、睡眠時におこる歯ぎしりや食いしばりは無意識下で行われるので、なかなかやめるのが難しいのが実際です。しかし、歯ぎしりは、ある種のストレス回避行動なので、必ずしも害があるばかりではありません。

例えば、人間は肉体的・心理的なストレスがかかった場合、それらを緩和するために様々なストレス回避行動を行います。歯ぎしりだけでなく、貧乏ゆすりであったり、身体の一部をさわる、首を回すなど特定の動きをしたりと様々なパターンがあります。 なんでもかんでも我慢して、ストレス性の胃潰瘍などを発症するよりは、特に実害がないかぎり多少の歯ぎしりは大目に見ても良いでしょう。(とくに成長期の子供の歯ぎしりは顎の発育に必要なものなので心配ありません)

 

もし、先月の症例のように一時的に強いストレスがかかり、歯ぎしりや食いしばりが悪化して、痛みや顎の運動障害が出た場合には、その時点でマウスピース(スプリント)で顎関節の負担を軽減したり、ストレッチやマッサージで筋肉の緊張をほぐしてあげるのが良いでしょう。(マウスピースはそれ自体がかみ合わせに影響をおよぼすことがあるので、特に痛みなどの問題が無い場合に、あまり長期に使用し続けるのは注意が必要です。)

また、歯ぎしりは皆さん気にされがちですが、実は食いしばりの方が身体への害が大きいことが多く、音がするなどないのでTCH同様周囲の人に気づかれにくく自覚がない場合も多いので要注意です。

 

特に強い食いしばりがある場合には、アブフラクションという独特な歯の欠けが見られることがあります。このアブフラクションについては、また来月お話ししていこうと思います。