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2020年 2月 抜歯の必要性

 さて、このホームページ「治療法と治療装置」のページの「抜歯と非抜歯」というコーナーで非抜歯(歯を抜かずに治療すること)にこだわりすぎると咬み合せの安定がかえって悪くなる場合があるというお話しをしましたが、今月のトピックスではその一例をご紹介したいと思います。

 まずはこちらの初診時の写真をごらんください。
いわゆる叢生とよばれる、歯がでこぼこに生えている歯並びです。年齢は18歳、男の子で主訴は「13歳のころから某歯科にて、取り外し式の装置で顎の拡大をして叢生の治療をしているが、5年経っても未だに完了しないので、現状がどうなっているのか知りたい」とのことでした。



確かに歯列は拡大されており、歯の並びだけを見ればでこぼこ自体はそれほどひどくありません。 しかし、完全にでこぼこをとるにはまだ足りませんし、上下の歯の中心が合っていません。さらに問題は以下の横から見た写真に現れています。



前歯は前方に傾斜がきつくなり奥歯も外向きの傾斜がきついため、咬みあわなくなっています。咬み合わせがうまくいかない分、顎の位置も不安定で、上下の歯の真ん中も合っていません(上写真参照)

なぜ、こうなってしまったのでしょう?  以下の模式図にしたがって見ていきましょう。




 この患者さんが顎の拡大の治療を始めたのは13歳からとのことでした。
当院で取り外し式の装置で顎の拡大を行う場合は、上記のように生え変わりの時期にEOAという装置を使って、顎の拡大・凸凹の改善・顎の誘導などを並行して行います。(詳しくは「トピックス2019年2~4月 乳歯のうちに取り外し装置で矯正」参照)
平均的な生え変わりの時期は6~12歳くらいです。個人差はあるので13歳でも間に合う場合もありますが、この患者さんの場合は少し遅かったのではないでしょうか。

とにもかくにも、当院に来院されたのは18歳ですので、これ以上の拡大は限界でした。現状を説明し抜歯にて治療させていただきました。

治療を終了して4年後の写真です。



非常に良い咬み合わせです。(犬歯の歯肉炎は多少気になりますが・・・これは歯ブラシの当て方の問題です。)
上下の前歯の中心も一致し、奥歯もとても緊密に咬みあっています。犬歯の部分は治療終了直後よりもしっかり咬んでおり、これは咬み合わせが安定している証拠です。
確かに健康な歯を抜かないというのは非常に大切なことなのですが、大事なのは歯の数よりも、顎の骨と歯のバランスであり、咬み合わせなのです。
車のタイヤに例えるとわかりやすいかもしれません。小さな車にたくさんタイヤがついていてもぐちゃぐちゃについていて地面に接地していなければ走行の邪魔にしかなりません。車のサイズに合った数のタイヤを正しい位置にきちんと装着してこそ効率よく走行できるというものです。
歯科の世界でよく言う「8020運動」というのがあり、これは「80歳までに20本以上の歯を残そう」という健康維持のキャンペーン運動なのですが、これはきちんと咬めている状態での話です。(ちなみに正常な成人の歯の数は28本)咬めていない歯をいくらたくさん持っていても宝の持ち腐れで意味がありません。そもそもきちんと咬めていなければ80歳まで20本残すこと自体が難しいでしょう。

矯正治療において歯を抜くことはあります。ですが基本的には抜かずに治療できる方法を常に模索しています。当院であればEOAであったりインプラント矯正であったり、様々な治療法を用います。しかし、決して「抜歯をしない」にこだわりすぎないようにしています。最終的にその患者さんに合った健康や審美性を得ることが重要だからです。来月のトピックスでは抜歯症例と非抜歯症例を比較しながらご紹介したいと思います。