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2017年 9月 保険でできる矯正治療について


1.保険でできる矯正治療があるのか?
2.自分が該当するのか?意外と自分のことでもわかっていない、見逃されがちな例
3.保険診療の勘違い・・・聞きかじり、記憶違い、思い込み
4.保険で治療を受ける際に気をつけたいこと




1.保険でできる矯正治療があるのか?
あります。ただし、特定の条件に該当する場合にかぎります。
そもそも保険による医療は、国によって定められた範囲の症例に適応され、美容整形や見た目のよい歯の被せなど、健康な日常生活を送るのに直接的に支障のないプラスアルファ的な治療には適応されにくい傾向があります。
基本的には矯正治療もこの範囲に相当し、保険は適応されません。歯並びが多少出っ歯や凸凹でも物を噛むのには支障はないからということです。

 しかし、物を噛めないくらい歯並びが悪かったら?
普通の矯正治療だけでは治せないくらい顎のズレが大きい人、口蓋裂といって、生まれつき上顎の骨が割れていて歯もよく生えることが出来ない人、また直接歯や顎の疾患ではありませんが先天性の全身疾患が原因で歯や顎に影響をおよぼすような症例ばど、前述のように特定の条件に該当する場合、保険の適応になります。

下記の場合に限り保険診療の対象となります。(以下、日本矯正歯科学会公式ホームページより抜粋)

  1. 「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
  2. 前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療
  3. 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療

※なお、これら保険適用される矯正歯科治療を行える医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。この保険医療機関の名簿に関しては、地方厚生局ホームページに最新の情報が掲載されております。

 

①の「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に関しましては、以下をご参照ください。

矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 (jos.gr.jp)




 厚生労働大臣が定める疾患の一つ 口蓋裂症例の口腔内:重度の叢生が見られる
    


2.自分が保険適応症例に該当するのか?増え続ける適応疾患 意外と自分のことでもわかっていない、見逃されがちな例

さて、「物を噛めないくらい歯並びが悪かったら」といっても、本人の主観で「咬みにくいから保険の適応にしてください」というわけにはいきません。なにしろ日本の保険制度は増え続ける医療費で常に財源不足なのですから。
ですので、保険の適応には、「明確に疾患名の診断がつく」ということが必要です。
この保険適応になる疾患は上記の通りなのですが、ここで気をつけたいのは、これらの保険適応疾患に自分が該当しているのか、本人も家族も気づいていない場合があるということです。

まず、顎変形症について。
顎変形症とは、顎の骨の位置のズレや変形など、顎の不具合が根本的な原因となって、噛み合わせの問題などが生じる疾患です。顎口腔機能診断施設に指定されている医療機関で診断し、顎変形症であることが認定され、規定の外科手術を含んだ治療を行えば、健康保険の適用の対象となります。自分では、そこまで深刻な疾患とは自覚していなくても、認定される可能性があるので、まずは歯医者さんに相談してみましょう。
後述する保険適応の先天性の疾患は医師側が一定の医学的診断基準によって診断を下すのですが、顎変形症の場合は実際に治療する矯正歯科医が診断名をくだします。この場合ある程度患者さん側の主観も影響してきます。たとえば、受け口の患者さんが来院されたとして、その症例がどうやっても通常の矯正治療だけでは治療がむずかしい場合と、ぎりぎり手術なしでも治療できるかどうかのボーダーラインくらいの症例の場合があります。
検査の結果を分析して、その症例によって手術を併用した場合と、矯正のみで治療した場合の、治療後の違いや治療中のメリットとデメリットなどをよく説明し、患者さん本人と相談の上で治療の方向を決定します。患者さん本人が顔貌の骨格的な改善を希望し、手術を併用して矯正治療することを承諾された場合に、診断名が「顎変形症」となり保険適応となります。  

  
     顎変形症の診断を受けた下顎前突症例の口元
         治療前
            


つづいて「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常について
この「厚生労働大臣が定める疾患」は約2年に一度のペースで見直されて増加しており、2007年にはわずか10疾患でしたが、2017年では55疾患で、その後も増加をつづけております。つまりお子さんが何らかの疾患の診断を受けたときには適応でなかった疾患も、いつのまにか保険適応になっている可能性がありますので、一度先ほどのサイトの下部にある疾患リストを確認してみましょう。 

       矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 (jos.gr.jp)

先天性の疾患というと生まれつき見た目にもすぐわかるような奇形的な外見特質をイメージしやすいのですが、決してそうとばかりではありません。疾患自体がある程度成長しないとわからない場合がありますし、逆に出生時に診断されていても、その後特に問題なく成長したためご家族も忘れてしまっている場合もあります。歯やあごに異常があらわれるといっても、そのあらわれ方は個人差があり、人によっては比較的軽度の場合もあり、本人に自覚がない場合もあるのです。

 
 保険適応疾患の一つピエールロバン症候群の口腔内:先ほどの口蓋裂と比べるとかなり軽度の叢生
                
      *ピエール・ロバン症候群

新生児において希に起こる先天性かつ複合的な疾患で、主な症状として小下顎症、舌根沈下、気道閉塞が揃って見られる。 その他の、付随的な症状としては軟口蓋裂、近視、緑内症、摂食障害、チアノーゼ、不眠症、心房(心室)中隔欠損症、心臓肥大、肺動脈高血圧症、動脈管開存症、脳障害、言語障害、運動機能障害などを伴うこともある。発生率は3000人に一人 とも3万人に一人と言われるが、ピエール・ロバンと診断されず、ただの小顎症と診断されるケースも多い。乳児期には下顎やオトガイが極端に後退していて、横から見ると鳥の様な顔つき(鳥貌様顔貌)呈するが、多くの場合発育と伴に下顎が上顎に追いつく様な発達(Catch-up growth)が見られ、顔貌も大きく改善することが報告されている。
 
当院の経験した例では、シルバー・ラッセル症候群のお子さんの治療をさせていただきましたが、外見的にもお口の中の状態も極端に異常があるといった雰囲気ではありませんでした。たしかに小柄なお子さんだなという印象はありましたが、そこまで異常に小さいという感じでもなく、歯並びも普通に凸凹しているくらいでしたので、かかりつけ医の紹介状とご本人・ご家族からの申し出がなければ気づかなかったかもしれません。

     *シルバー・ラッセル症候群(Silver-Russell Syndrome: SRS)
重度の子宮内発育遅延、出生後の重度の成長障害、三角の顔や広い額などのような頭蓋および顔面特徴、身体非対称と ほかの様々な小奇形で特徴づけられる、臨床的に多彩な症状を呈する疾患
 
また、2012年に適応疾患に追加された「6歯以上の先天性部分(性)無歯症」、これは永臼歯の数が通常より少ない症例です。 以前こちらのトピックスでも取り上げたのですが、永臼歯の数が少ない子自体は決して少なくありません。(2016年   8月 永久歯先天性欠如は10人に1人!! )1本だけ足らない子もから複数本足りない子まですべての割合ですが、このうち6本以上足らない場合「6歯以上の先天性部分(性)無歯症」という診断名になり、保険適応になります。 「無歯症」というとぜんぜん歯がないような印象をうけますが、永臼歯がない分、乳歯が残っている場合も多く、永臼歯の交換は遅い子だと15~16歳くらいまでかかる子もいますので、なかなか気づかれない場合もあります。学校検診でなんらかのチェックを受けたらきちんと歯科を受診しましょう。



3.保険診療の勘違い・・・聞きかじり、記憶違い、思い込み
さて、今回この保険について書くことになったきっかけですが、患者さんとのお話のなかで、「最近、保険で矯正してる子、多いですよね~」といわれたことです。
確かに保険適応疾患はふえていますが、そもそもその先天性疾患自体、出現頻度がそう高いものではないので、(口蓋裂で500人に1人くらい、ラッセルシルバー症候群になると日本全国で500~1000人くらい)「??」と思ったのですが、その後も別件ですが、お電話で初めての方から「保険で矯正をやっていますか?」という問い合わせがあり、「やっていますが、適応になるのは先天性疾患がある場合と手術を併用する場合です」とお伝えするとすぐに切れてしまいました。

・・・どうも、お二人とも普通の矯正も保険でできる歯科医院があると思われている様子です。

保険診療は国の法律でさだめられている以上、例外はありえません。
気になったので、インターネットで保険適応の矯正治療と、その認知度について調べてみたりしたのですが、どうやら、一般の虫歯などの保険診療を主におこなっている歯医者で矯正治療を受けている患者さんで、矯正治療も保険で受けていると勘違いしている方がいるようです。

保険診療を主にしている歯科では、基本的に保険証の提示を求められます。またそういった一般歯科が主の医院では矯正治療も既成のマウスピースなどを使った小額の簡単な矯正のみを行う場合があり、結果、「保険証をだしている」「治療費の額が低い」ということで、保険で矯正治療を受けていると、本人ですら勘違いしている場合があるようです。

インターネット上のサイトでも、きちんとした公のサイトでは保険についておおむね正しく書いてあるのですが、質問サイトでの質問やその回答にはあいまいなものや勘違いしたものもかなりあり、ひどいものになると、ベストアンサーが「自費診療はぼったくり医師のやることだ」といったものもある始末で、「ぼったくり」は極端な例ですが、善意の回答でも回答者自身が勘違いしていたり、個人の経験のみに基づいた思い込みの回答もあり、質問サイトのマイナスの一面を感じました。たしかに専門的なサイトを読むのはめんどうかも知れませんが、安易に都合のよい回答のみを鵜呑みにするのは気をつけましょう。


4.保険で治療を受ける際に気をつけたいこと
保険適応疾患に該当すればだれでもどこでも保険で治療できるかというと、そうではありません。以下に保険で矯正治療を受ける際に気をつけたいことをまとめましたので、参考になさってください。

1) 矯正治療する歯医者が国の指定機関であること
保険診療で歯列矯正を行うには国が指定した特別な機関である必要があります。
顎変形症 → 顎口腔機能(がくこうくうきのう)の施設
先天疾患の治療 → 障害者自立支援の指定医療機関
どの医院でもできるわけではなく、この二つは別々の資格ですので、事前に確認が必要です。歯列矯正専門医でも、この指定を受けていなければ保険で歯列矯正を行うことはできません。
 
2) 舌側矯正やアライナー治療(透明マウスピース矯正装置)は対象外
保険診療で歯列矯正を行う場合は、歯の内側に装置を付ける舌側矯正やアライナー治療では行うことができません。保険診療で認められている歯列矯正は難易度が高い治療が多く、また、保険では機能を優先するため審美的な治療を行うことができなくなっています。ただし、ブラケット自体は透明なものの使用がみとめられています。
 
3) 健康保険に加入していること
当たり前のことですが、健康保険に加入していなければ保険診療自体が使うことができません。多くの場合は3割負担の治療ですが、条件によって負担金が変わります。それにより費用も変わってきます。
 
4) 矯正治療でも保険適応なので、高額医療費の対象になるが、この場合、自分で申請する必要あり。
高額療養費とは、保険治療で払う医療費を一定額以上払わなくて済む制度です。手術時などひと月あたりに支払った額が大きい場合、申請すれば後日、一部治療費が返金されますし、あらかじめ手続きしておけば支払い時に限度額(年収約370~約770万円世帯の場合80,100円+(医療費-267,000円)×1%)までの支払いですみます。(入院時の諸経費等は別) 1ヶ月間(同じ月内)に同じ医療機関で健康保険で払った医療費が自己負担限度額を超えた場合に適応されますので、入院が月をまたぐと、一月あたりが限度額を超えない場合や、自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定が違うなど、色々細かい決まりがあり、注意が必要です。
5) 「別に厚生労働大臣が定める疾患」に該当する場合は診断名の明記された診断書などが必要
保険適用の際には母子手帳やかかりつけ医などによる診断名の明記された書類が必要です。手元にない場合はかかりつけ医に新たに書いてもらいましょう。