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2016年 9月 12歳臼歯 ちゃんと生えていますか? ―12歳臼歯の部分治療―

 皆さん12歳臼歯をご存知ですか?
その名のとおり12歳ころに生えてくる永久歯で、12歳臼歯まできちんと生え揃って永久歯列の完成となります。
乳歯の抜けた部分に生え変わってくるのでなく、それまでの一番奥の歯(6歳臼歯)のさらに奥にいきなり生えてくるので、たまに親知らずが生えてきたと勘違いされる方もいますが、永久歯の咬み合わせの中でとても重要な役割をもつ歯ですので、上下きちんと咬み合わさっていることが大切です。

12歳臼歯 ちゃんと生えていますか?
 ちなみに12歳臼歯というのは俗称で、正式には第二大臼歯といいます。
6歳臼歯は第一大臼歯、親知らずは第三大臼歯といい、大臼歯は全部で三種類ありますが、現代人は顎が小さく第三大臼歯である親知らずは歯そのものができなかったり、あっても生えてこない人が多いため、12歳臼歯まで揃っていれば正常ということになっています。
 さて、この12歳臼歯ですが、親知らずのように歯そのものがない人はあまりいないのですが、きちんと生えてこないという方が意外といるのです。やはり親知らず同様に顎が小さいことが原因と考えられますが、斜めに生えて、手前の歯にぶつかって生え切れなくなったり、上下で咬み合わなくなったりしているのです。


12歳臼歯の歯列不正の種類と問題点
 12歳臼歯の問題は実際には大きく以下の三つのパターンにわけられますが、いずれも歯として機能できないだけでなく、汚れがたまりやすく虫歯や歯周病の原因になったり、顎の動きの妨げになります。片咬み癖による顔や顎関節の変形にも注意が必要です。

1 鋏状咬合(シザーズバイト  シザー=はさみ バイト=咬合)

    

 はさみ(鋏)の刃のように上下の歯がすれ違っている咬み合わせです。通常でも上の12歳臼歯はやや外向き、下はやや内向きに生えてくるのですが、この外向き内向きの傾斜が強すぎて咬み合わせの面が合わなくなっているので食べ物をしっかりすり潰して噛むことができません。(余談ですが、「咬む」と「噛む」の漢字の使い分けは  「噛(か)む」と「咬(か)む」 -良い咬み合わせのために良く噛む- を参照してください)
本来、臼歯とは字のごとく、うす(臼)のようにものをすり潰すのが役割であり、そのために臼歯の咬みあわせの面には細かい溝が複雑に入っています。この溝同士が上下でぴったり咬み合うように面で合わさるので、食べ物をしっかり捕らえてすり潰すことが出来るのですが、シザーズでは内側と外側のツルッと丸い面同士の接触なので、点状の接触となります。
 また、下の歯の内側・上の歯の外側は汚れがたまりやすい上に、歯ブラシも当てにくく、虫歯や歯周病になりやすくなります。(特にこの状態の人では、上の歯の外側から後ろにかけて虫歯が出来ている人が多いです)
咬みにくかったり、食べ物がつまり易かったりすると、どうしても咬みやすい側ばかりで咬む癖(片咬み)がつき、長年にわたった場合、顔や顎関節の変形につながります。

2 交叉咬合(クロスバイト)



 シザーズとは逆に上の歯が内向き、下が外向きに傾斜しています。
一見咬み合わせの面は当たっていますが、歯の咬み合わせの溝は上下で決まった位置で咬んではじめて溝の山谷が一致しますので、やはり接触面積は少なくなり咀嚼(物を噛むこと)の効率は悪くなります。また、咀嚼時に顎を左右に動かすとき、この変な位置で咬み合っている歯部分が邪魔になりスムーズな顎の運動の妨げになります。
シザーズ同様に片咬みによる顔や顎関節の変形に注意が必要です。

3 傾斜による萌出困難




 斜めや横向きに生えて、隣の歯にぶつかって生え切れなくなった状態です。
たいていの場合、前方に傾斜しており、前隣の臼歯に引っかかって萌出が止まってしまいます。下顎の歯でよく見られますが、上顎でもおこります。
歯の一部(歯の後ろの山のあたり)が出てきたところで萌出が止まったままになったり、いつまでも生えて来ないのでレントゲンを撮ったら、ひっかかったまま埋まっていた、などです。

親知らずにはこういった状態は大変多く、多くの親知らずが抜歯を余儀なくされるのはこのためです。(上図 親知らず傾斜症例)
また、6歳臼歯でもおこることがありますが、6歳臼歯・12歳臼歯は健康上非常に重要な歯ですので、抜くわけにはいきません。ちなみに6歳臼歯一本失うと咀嚼機能の20%を損なうといわれています。できるだけ早く治療して改善してあげたいものです。

 こういった萌出困難な状態は歯としてまったく機能しないだけでなく、非常に汚れがたまりやすく、ひっかかっている隣の6歳臼歯までもが虫歯や歯周病のリスクにさらされます。
傾斜した下側の部分がどうがんばっても歯ブラシをあてることが不可能であり、6歳臼歯との間に虫歯菌や歯周病菌が繁殖するからです。また虫歯になった際の治療が大変難しく、再発や抜歯の可能性が高くなります。

12歳臼歯どうしたらいいの?
 ところで、こういった12歳臼歯の歯列不正、気づいていなかったり、知っていても放置される場合が少なくありません。12歳くらいの年齢になると、親が子供のお口の中をみることも少なくなってきますし、本人も大人と違って、まだ健康への関心や知識もあまりありません。また12歳臼歯といっても、12歳ぴったりに生えてくるわけでなく、個人差によって、遅い人では高校生くらいになります。歯科検診でも集団検診では一番奥にある12歳臼歯は見えづらく、萌出の途中なのか、ひっかかっているのかは判別が困難です。 

 さらに、こういった歯列不正は矯正で治すことになるのですが、ここがまたひとつのハードルになるようです。奥歯の歯並びなので、見た目に気になるわけでなく、痛みがあるわけでもない。自覚としてはせいぜい物が詰まりやすいくらいで、咬みにくさなども感じない方がほとんどです。
この状態で保険のきかない治療費がいくらかかるかわからない矯正歯科の門を叩くのはかなりのハードルなのかもしれません。自分でもどうなっているかよくわからない奥歯を治すといわれても治療法のイメージ自体も想像できないことでしょう。(参考までに以下に当院での治療法と治療費を紹介します) 

 そんなわけで、なんとなく変だなと思いつつ気づかないふりをしがちになる12歳臼歯ですが、しかし傾斜した歯は自然によくなることはなく、年を追うごとに少しずつ悪くなっていきます。一度虫歯の詰め物をした歯は確実に寿命を縮め、歯周病で骨吸収した歯槽骨はもとには戻りません。悪くなってからの歯科治療にはお金もかかるものです。手遅れになって大金をかける羽目になることのないよう、自分やお子さんの奥歯の状況を把握しておきましょう。パノラマレントゲンで簡単に確認できますので、まずはちゃんと生えるかどうかだけでも一度みておくと安心です。

大臼歯のアップライト治療
12歳臼歯に限らず、傾斜した大臼歯は部分的な装置で比較的簡単に起こすことができます。傾斜した奥歯を起こす治療ですので「アップライト」と呼びます。
以下は当院での基本的な治療法と治療費になります。装置は何パターンかありますが、基本の考え方は同じで、傾斜した臼歯の隣の歯を固定源にして、そこに取り付けた矯正装置で押したり引いたりして傾斜歯をおこします。1本の大臼歯をアップライトするのに固定源の歯が1本では力負けして固定源の歯も動いてしまうので、固定源にする歯は反対側の大臼歯とワイヤーの器具(リンガルアーチ)で繋ぎます。大臼歯一本のアップライトであれば装置を着ける歯は以上の3本だけです。装置を着ける歯はいずれも奥歯ですので外からはほぼ見えません。

<部分治療 大臼歯アップライト>
治療期間:半年~1年  
装置の調整:一月に一回  
治療費:矯正管理料 10万円(外税) *別途 検査料・処置料   

詳細はこちら→治療費について