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2015年 11月 矯正装置の出来るまで・・・結構、手作りなんです!

今月は装置のお話。
昨今、既製品の矯正装置も色々出回っていますが、こちらはこのホームページの「子供の矯正治療」のページでご紹介している矯正装置 EOA(エラスティック・オープン・アクチベーター)です。


 
当院では非常におなじみの装置で、子供の患者さんでは約7割の症例で使用しています。なぜ、そんなにこの装置を多用しているか・・・?単純にものすごく効果が高いからです。
凸凹の歯並びから、受け口、上顎前突までほとんどの症例に有効な上、当院では使用した患者さんのうち約8割がこの取り外し装置のみで治療を終了しています。
治療前             治療後
           

この装置の機能や効果は別のページに譲るとして、今月はこの毎日当たり前のように使用しているこの装置が、どのように作られているかご紹介してみようと思います。

                            参考症例 トピックス
                                『取り外し式装置EOAはスゴイ!!』
                                『取り外し式装置EOAはスゴイ!!  その2 -EOAでなぜ治る?-』
                                『機能的矯正装置 -取り外し式装置EOAの仲間たち-』
                                『筋機能矯正装置の上手な使い方』

                                『取り外し式装置EOAで非抜歯叢生治療』

まずは歯型から。みなさん苦手な方が多いですね。しかし、EOAは完全に各個人にあわせて一つ一つオーダーメイドされる装置ですので、これがないと始まりません。
  歯型用のトレーを患者さんに合うサイズを選び、アルジネートという海藻の成分から作られる粉末の型材に水を加えて機械で練ります。
 ペースト状になったアルジネートをトレーに盛り付けます。固まるまで1分30秒、特に夏場など気温が高いと更に早くなりますので、スピード勝負で、お口の中へ。
無事採れました。EOAは上下一体型の装置なので、上下顎1つずつ採ります。
こちらは上下の顎の位置を印す型です。U字型のワックスを顎をいい位置に誘導して咬んでもらいます。ちなみにこちらのワックスも仕事の間にスタッフが手作りしています。 
     


次に採った歯型を使って、装置を作る土台になる石膏模型を作ります。
採った歯型が乾燥して変形しないうちにすばやく石膏を流し固めて模型にします。これも石膏の粉と専用の消毒剤を溶かした水を機械で、気泡が入らないよう空気を抜きながら練ります。
気泡が入るとせっかくの模型が穴ぼこだらけになって、後の作業に影響しますので、これまた専用の機械にかけながら注意深く流し込みます。
出来た模型をかみ合わせのワックス型を咬ませて作業用の金属のベースに石膏を盛り付けて固定します。 このベースは上下外しても元の位置に戻せる仕組みですので、後の各作業は上下外して行います。


いよいよ製作作業の開始です。といっても、まだ下準備は続きます。
装置のワイヤーパーツの配置の下書きをします。ワイヤーは歯を動かすための主な部分ですので歯に当たる位置や角度などが重要で、患者さんの歯にぴったり沿うように作らねばなりません。
歯ぐきの部分にワイヤーが直接触れないように薄いワックスを貼ります。歯ぐきに当たって痛くなってもいけませんし、張り出しすぎても舌や頬の内側に当たって痛くなるので、歯ぐきの表面から1ミリ程度浮いたラインに沿うように作っていきます。


さあ、ワイヤーの部分から製作開始!
ワイヤーパーツをひとつずつペンチで曲げて作ります。EOAは比較的ワイヤーパーツが多く、かなり三次元的な形なので、もっともセンスと技術が要求される工程です。各パーツによって3種類の太さを使い分けます。
できたパーツはひとつずつ模型へ固定します。固定はワックスをへらですくってバーナーで溶かしながらワイヤーの部分に流していきます。
ワイヤーの固定までできました。


次は樹脂部分を作っていきます。
樹脂の粉と液を混ぜてワイヤーの周りに固めていきますが、この混ぜ方は「筆盛り」「ふりかけ」など何通りかあり、各部分によって方法を変えながら作っていきます。いずれにしても気泡が入らないように、均一な厚みに盛ることが重要。
上下のベースが出来たところ
上下を咬ませて、更に樹脂を足して固めます。


完成までもうひとがんばり、仕上げ研磨です。
樹脂部分がすべて出来たら模型から外します。この時点では樹脂部分はガビガビなので、ここから完成形をめざして削って形を整えていきます。装置の外周の出来上がり線が描きこまれていますね。ここまで削っていきます。
いわゆる歯医者のドリル刃高速で回転する軸に、用途に合わせて刃先を替えながら削っていきます。
当院では六段階。一番粗いもので表面の凹凸を全面一層削れたら、次の中粗でもう一層という風に段階を進めていきます。
刃は歯を削るのでなく、技工用なのでわりと大きく、左から右側のほうに行くにつれてキメの細かいものになっていき、凸凹の樹脂の表面をつるつるに仕上げていきます。
ある程度形が出来たところ。内側の舌に当たる部分が滑らかに仕上がっています。
しかし、更につるつるにするために専用のペーストで最終研磨。
とにかく、敏感なお子様方に使ってもらうためには大変です。


完成!!
模型に装着させたところ。
                  

正面



内側



 
いかがでしたか?一見小さなワイヤーとプラスチックの塊ですが、実はとてもたくさんの技術と手間がかかっています。
なんとなく、歯型を機械にセットしたら自動でできると思っていませんでしたか?たしかにデジタル化が進んで、虫歯の詰め物などは3Dプリンターで作れる時代になってきてはいますが、こういった矯正装置はまったくの手作業で作られています。

しかし、その分既製品の装置とはフィット感が比べ物になりません。患者さんの歯にぴったり合う形に作られているため、確実に歯を動かすことができます。
なにより、フィットがよいということは患者さん自身が使いやすいということです。こういった取り外し式の装置は患者さんが使ってくれないことには一切治療が進みません。
できるだけ患者さんにしっかり使っていただける装置をめざして、スタッフ一同、一つ一つの手順を大切に製作しています。