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2021年 12月 保定と歯並びの変化

矯正歯科治療後のきれいになった歯並びを維持し安定させることを保定といいます。

後戻りといって、装置をはずした瞬間から歯は元の位置に戻ろうとします。(ピアスの穴を開けていてもピアスをつけないでいると、すぐに穴がふさがろうとしてくるのと同じです。)また、矯正歯科治療を受ける、受けないにかかわらず歯並びとは 一生を通して少しずつ変化し続けるものなので、せっかくきれいになった歯並びを長く美しく保つために、重要になってくるのが保定です。

保定に関しては本ホームページの保定装置のコーナーでも少し説明していますが、今月はあらためて保定と歯並びの経時変化について、実際の症例を見ながらお話していきます。

初診は随分以前の症例ですが、治療を終了後10年以上経って再治療させていただいた例です。

 

 

初診時 

年齢11歳9か月

左上犬歯は未萌出ですが生える隙間が足らず、二番目の前歯が内側に萌出しています。

 

年齢11歳11か月

全体的な治療は犬歯が生えてからになりますので、それまでは前処置として奥歯の位置を良くするHGという装置を使った治療をまず行いました。

 

年齢12歳5か月

犬歯が萌出したのでからブラケット治療(MBS)を開始しました。

 

年齢12歳10か月

下顎にもブラケット装着。

 

年齢14歳4か月

MBS開始から1年11か月経過。

きれいな歯並びになり、装置を撤去して保定に入りました。

保定として上の前歯部の裏側にフィックスドリテーナーを装着し、取り外し式のベッグリテーナーを製作しました。

当院としては、大抵の場合、上記のように固定式と取り外し式の二段構えで保定をおこないます。

歯を裏側から細いワイヤーで直に固定するフィックスドリテーナーで隣同士の歯がずれるのを防ぎ、歯列全体を囲む取り外し式の保定装置で歯列のアーチ型の変形をふせぎます。

随分以前症例ですので、取り外し式の保定装置としてはベッグリテーナーを使用しています。

三か月ごとの定期観察を行い、ベッグリテーナーは、当初1年間は昼夜(食事・歯磨き以外)使用し、その後夜のみ→二日に一回夜→週一回夜 と使用時間を減らしていきました。

 

年齢16歳4か月

かみ合わせが落ち着いているので、フィックスドリテーナーを撤去し、ベッグリテーナー週一回夜使用とし、定期観察を継続しました。

 

年齢17歳5か月

咬合状態良好

治療終了から3年5か月経過し、良好な歯並びが維持されていましたので、当院からの定期観察を終了しました。

 

 

 

 

年齢27歳3か月  治療終了より13年1か月経過

前歯部が凸凹してきたとのことで、来院されました。

初診時ほどではありませんが、前歯部が凸凹してきています。取り外し式の保定装置はもう何年も使用していませんでした。

本人の希望とご相談の上、奥歯のかみ合わせに問題はなかったため上下前歯部のみ部分的に再治療行なうことにしました。

同日上 前歯部6歯MBS

翌月 下前歯部6歯MBS

 

年齢27歳9か月

再治療開始から半年。再治療完了

保定として上下フィックスドリテーナー+スプリングリテーナー夜間毎日使用

 

 

 

さて、まず、保定装置についてですが、保定装置とは矯正歯科治療後の歯並びを維持するために使用するギプスのようなもので、特にMBSで精密な治療を行った後には不可欠な装置です。

固定式と取り外し式の装置がありますが、矯正歯科治療終了後すぐに使用し始め、矯正治療後の後戻りは時間が経過するほど減少していくものなので、取り外し式の装置は徐々に使用時間を減らしながら歯を慣らしていきます。

しかし、この取り外し式の装置は取り外しがきく分、患者さんによっては、なかなか装着できない患者さんもおられます。最初はちゃんと使えていても、なんとなくめんどうくさくなってしまう方が多いのが実状です。

ですので、当院としては、保険的に固定式のフィックスドリテーナーも装着します。万が一取り外しの保定装置が使えなくてもフィックスドリテーナーがついている限りは、ある程度は歯並びを維持してくれます。ただし、アーチ全体の保持や、歯の動く力が強い場合はフィックスドリテーナーのみでの保定はむずかしいですので、取り外し式の保定装置との二段構えとし、定期観察を行う保定期間(当院では3年程度)の間、患者さんごとに何が適しているかを観察していきます。

 

ところで、今回の症例ですが、保定装置はそこそこきちんと使えており、治療終了後3年経った時点でも安定した歯並びを保っておりましたので、フィックスドリテーナーも撤去し取り外し式の保定装置も週一回程度確認のために入れてもらうということで保定期間を終了いたしました。

しかしながら、13年後に来院された時には前歯部に凸凹がでてしまいました。上顎の前歯部に関しては元の歯並びに近い形になっていますが、ここで注目は下顎の前歯部です。この症例においては元の歯並びでは凸凹は上顎の前歯部に集中しており、下の前歯には凸凹ありませんでした。ですので、この下顎前歯部の凸凹に関してはいわゆる矯正治療の後戻りとは違うということです。

上顎

初診時と再治療前

下顎

初診時と再治療前

では、何故か…。それが加齢による変化です。

冒頭で「矯正歯科治療を受ける、受けないにかかわらず歯並びとは 一生を通して少しずつ変化し続けるもの」と書きました。

歯は毎日使う器官です。また、硬組織で、他の皮膚などの組織のような再生機能がなく、爪や髪の毛のようにどんどん伸びるということもありません。つまり毎日すり減りつづけています。ごくわずかで自分では気づかない量のすり減りでも何年も経時するうちに1mmや2mm擦り減ってしまうのはごく普通のことで、これを「咬んで、摩耗する」ということで、「咬耗」といいます。

かみ合う奥歯がすり減ればかみ合わせも変わっていきます。

また、咬む力の重圧によっても歯は動きます。人間の咬む力は自身の体重と同じくらいと言われています。つまり成人の奥歯には50~70㎏の力が毎日かかっているのです。ある程度の年齢を過ぎた方は経験があるかと思いますが、「若い頃より前歯の凸凹がきつくなってきた」「前歯が出っ張ってきた」「奥歯が倒れてきた」など、長年の重圧にかみ合わせは少しずつ変化していきます。

その他には親知らずが生えてくる時に押されて手前の歯が倒れたり(親知らずを抜くと元に戻ることもあります)、歯周病で歯の根元の骨がなくなって歯がすきっ歯になったり倒れたりすることもあります。咬耗やかみ合わせによる10年20年かけて緩やかに起こりますが、親知らずや歯周病の場合は比較的短期間に起こることもあります。

こういった経時変化は元々歯並びが悪い場合は少し悪くなっても気づきにくいですが、まったく綺麗な歯並びからずれてくると気になるものです。

 

この症例はずいぶん以前の症例で、取り外しの保定装置は一般的なベッグリテーナーを使用していますが、当院では近年では成人の患者さんも多いこともあり、取り外しの保定装置はもっと維持力の強いスプリングリテーナーもしくはさらにアレンジを加えたスプリングワイヤーリテーナーを使用して、さらに、やはり取り外し式の保定装置はあまり使えない・・・というタイプの方は保定期間終了後もフィックスドリテーナーを付けたままにすることをおすすめしています。

 

こうした保定はみなさん「いつまでしないといけないのだろう」とか、かかりつけの歯科で「もう外していいのでは?」と言われたなどいろいろありますが、冒頭の「矯正歯科治療を受ける、受けないにかかわらず歯並びとは 一生を通して少しずつ変化し続けるもの」という認識をもっていただければと思います。例えば「パーソナルジムに入会してパーフェクトなボディに鍛えあげる」、「高級な補正下着でシェイプアップする」、しかし、それらを辞めてしまったらどうでしょうか?「美は一日にしてならず」といいますが、できあがった「美」を継続する道もまた続いているのです。もちろん、その道をどこまで歩んでいくかは人それぞれかと思います。その歩みをすこしでもサポートさせて頂ければ幸いです。


治療データ詳細

主訴:前歯部の凸凹  診断名:叢生  年齢:11y9m  

治療装置:マルチブラケット装置

抜歯部位:非抜歯 

治療期間:1年11か月 

治療費:矯正管理料として45万円(検査料・処置料別途)

 

再治療 

年齢:23y3m

治療装置:上下犬歯から犬歯まで各6歯マルチブラケット装置

抜歯部位:非抜歯 

治療期間:6か月 

治療費:矯正管理料として10万円(検査料・処置料別途)

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について:

① 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。 ② 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。 ③ 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重 要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。 ④ 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まります ので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。 ⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がること があります。 ⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。 ⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。 ⑧ 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。 ⑨ 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあり ます。 ⑩ 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。 ⑪ 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。 ⑫ 矯正装置を誤飲する可能性があります。 ⑬ 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する 可能性があります。 ⑭ 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。 ⑮ 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物) などをやりなおす可能性があります。 ⑯ あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。 ⑰ 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。 ⑱ 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。