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2021年 1月 舌癖(ぜつへき)

 先月は癖と歯並びに関係についてお話しましたが、今月はその中でも代表的な舌癖と開咬についてもう少しお話していきたいと思います。

 

 まずは先月にもご紹介した、こちらの写真をご覧下さい。

 

 奥歯はしっかりかみ合っているのに前歯はまったくかみ合いません。これが開咬とよばれる咬み合わせです。

 開咬の原因の多くが指しゃぶりや舌癖といった癖によることは先月お話しましたね。この方は成人ですのでもちろん指しゃぶりの習癖はありませんし開咬の原因は他にある場合もあるのですが、この症例では前歯の開き方が特徴的ですので、おそらく舌癖はあったはずです。指しゃぶりは成長にしたがって、本人の自覚とともに自然にやめるようになりますが、舌癖は本人にも自覚が無く、また周囲の人にも気付かれにくいので、やっかいです。

舌の癖といっても、ほとんどの方が自分の舌が普段どこにあるかなんて考えたこともないでしょう。ただし、たとえば「うちの子、唇がいつもゆるく開いているなあ」とか「もう大きいのにサ行やタ行の発音が舌足らずだわ」とか「太っていないのに、どうして二重顎っぽいのだろう?」などと気になったことはないでしょうか?そんな方は一度舌の位置を意識してみてください。

 

 ということで、では、正常な舌の位置とはどこなのでしょう?

まず、リラックスした状態で、舌の先がどこに触れているか意識を集中してみて下さい。上の前歯の裏ですか?下の前歯の裏?それとも前歯の先や唇の内側ですか?

 

 正解は上の前歯の内側の歯ぐきのあたりです。下の図をご覧下さい。

 

 

 

 リラックスした状態で自然に舌の先が上の前歯の内側の歯ぐきのあたりにあり、舌全体も上顎にぴったり奥までくっついている状態が正常な舌位です。

ところが、指しゃぶりや舌癖がある場合は下図のように上下の前歯の間に指や舌が入っています。無意識にリラックスした状態で常に舌は下に落ちており上顎との間に隙間があります。口呼吸の癖のある場合も同様に舌が落ちており、舌を持続的に上顎につけている力もありません。常に舌筋が緩んでいるので、太っているわけでもないのに二重顎のように見えてしまいやすくなります。

 

いずれにしても舌や唇がこの形になっていると、常時上下の前歯に圧力がかかっていることになります。

また、このように舌の安静位(リラックスした状態での基本の位置)がずれている場合、嚥下(えんげ)時(物を飲み込むこと)にも舌の動かし方が間違っていることが多く、嚥下のたびに舌を前方に押し出しながら飲み込むのでさらに強く歯に圧力をかけてしまうのです。

 歯は外からの唇の圧力と内側からの舌の圧力のバランスで位置が変わってきます。つまり、舌癖や嚥下癖があると内からの圧力が勝ってしまい、開咬や上顎前突などの歯列不正をひきおこしてしまいます。

 しかし、意識してそれらの癖をなおせば、また歯の位置も変わっていきます。

特に子供の開咬治療は舌を前に出さないようにする装置を装着したり舌訓練を行うだけで治ることが多くあります。舌訓練とはMFTという筋機能療法の一環で、発音・嚥下・咀嚼(そしゃく)(噛むこと)などのお口の機能にかかわる筋肉をトレーニングすることで正しい機能を回復させます。子供のうちならまだ比較的舌癖が固定化しておらず、修正しやすいのです。(乳歯永久歯混合歯列<症例1 8歳 取り外し装置治療例>参照)

逆に治療を終了して咬み合わせが良くなっても、舌癖が治っていないと、また歯並びが戻ってしまう場合もありますので要注意です。

開咬の方の多くの場合、咬む力や唇の筋肉が弱く、またTCHなどほかの癖を持っている場合も多く、矯正治療の中で最も後戻りしやすい症例です。人体は日々の生活の積み重ねによって成り立つものです。癖を意識することと、訓練によって口腔周囲の正しい筋力をつけることが大切です。