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2019年 4月 取り外し装置の長所・短所と使い方のコツ

ここ2ヶ月にわたって取外し式装置EOAについてお話してきましたが、矯正治療で使う取り外し装置には様々な種類があります。前回のお話しの中で出てきた「拡大床」も取り外しではありますが、こちらは「床」タイプという種類の一種で、「床」タイプは入れ歯のように平たい形で上顎(または下顎)の歯列にはめこんで使用する装置です。

<拡大床>                               <EOA>
  


対してEOAは「機能的矯正装置」という装置の仲間で、上下一体型で上下の顎で咬み込んで使用するタイプになります。咬み込むタイプではその他にも昨今では既製品の軟らかい樹脂でできた、簡易的なマウスピース型の装置もありますが、今回はEOAとその仲間たちの機能的矯正装置の種類や特徴、上手に使うためのコツとポイントなどをお話ししていきたいと思います。

機能的矯正装置の特徴 前回のEOAの仕組みでも触れましたが、この機能的矯正装置は、上下一体型になっており、顎の位置の不調和を咬む力など、口の周りや顎顔面の筋肉の力を利用して矯正治療をおこなう装置です。

          



機能的矯正装置はEOAのほかにもいろいろな種類があり、治療の目的によって使い分けます。実際にどんな種類があるのかみていきましょう。




機能的矯正装置の種類

1.FKO(別名アクチバートル)


機能的矯正装置の中で、もっとも基本の形の装置です。名前はアルファベットでFKO(エフ・カー・オーと発音します)、またはアクチバートルと呼びます。主に上顎前突や開咬の症例に使用します。 上顎前突の場合、上図のEOA同様に顎の位置を前に誘導して成長を促したり、上前歯にあたる部分に付いているワイヤーで前歯を中に押し込んだりしながら治療を進めていきます。
特に前歯の咬み込みが深すぎて下前歯が上前歯で隠れてしまうような咬み合わせの症例はEOAでは治しにくい症例ですので、FKOや後述のバイオネーターが適しています。顎位を誘導しつつ、奥歯が伸びるのを促すために奥にあたる樹脂部分を削って調整していきます。また、逆に前歯が咬み合わない開咬の症例の場合は、一番の原因は舌を前に出す癖ですので、FKOを装着することで、癖が抑制され、歯が本来あるべき良い位置に動いてきます。

 
2.バイオネーター


FKOとEOAの中間くらいにあたる装置です。 EOAのように樹脂部分が左右に分かれていないので、顎の拡大はできませんが、上前歯の内側に弾線(歯を押すための細いワイヤー)がついていますので、上前歯の叢生(でこぼこした歯並び)を治すことができます。 上顎前突に多くみられる、真ん中の2本の歯だけ前に出て、両脇の歯がひっこんでいるタイプや、FKO同様に前歯の咬み合わせの深いタイプの症例に好適です。


3.ビムラー


こちらは、主に受け口の治療に使用します。 もっともワイヤー部分が多く、咬み込むとワイヤーの弾力が歯に伝わって、上前歯を外に、下前歯を内に入れる力が働きます。


さて、当院で主に使っている機能的矯正装置をEOAとあわせて4種類ご紹介いたしましたが、これらは、あくまで各装置の基本形ですので、それぞれ症例にあわせて様々なアレンジの設計があります。
当院での子供さんの治療では、約8割以上がこれらの機能的矯正装置で治療しています。一つ一つ患者さん本人の歯形に合わせて製作された機能的矯正装置は既製品のマウスピース装置に比べ装着感が良く、また効率的に歯を動かすことが出来ますので、たいていの症例がこれらの装置で治療できます。そして、矯正装置が取外しできるということは、見た目の問題だけでなく、様々なメリットがあります。 ただし、もちろん万能というわけではありませんので、デメリットもあります。以下に両方をまとめましたので、参考になさってください。


機能的矯正装置の長所&短所

長所
1.装置の見た目を気にしなくてよい
  (日中は外すので、学校などで、心無い他者にからかわれたりするリスクがない)
2.歯磨きなどの口腔清掃の妨げにならないので、虫歯の心配が少ない
3.壊したり、変形させたりしても外せるので、お口の中を傷つけない
  (固定式の場合、小さいお子さんなど、自分でいじって装置を変形させてしまい、
   お口の中を傷つけたりすることがある)
4.固定式にくらべ、成長にしたがってゆっくり歯を動かすので、治療後の安定がよい
5.顎の成長そのものをコントロールするので、顎のズレやゆがみを治療できる。
  歯を抜かずに治療できる場合も多くなる。
6.通院の頻度が少なくてよい(2ヶ月に1回。固定式の場合は1ヶ月に一回)

短所
1.患者さん本人が装置をきちんと毎日つけないかぎり、治療が進まない。
2.固定式にくらべると、歯の動きが遅い
3.マルチブラケット(固定式の装置)ほどは、自在に歯を動かすことはできない。
4.乳歯から永久歯への交換期でないと効果がでにくい(6~12歳前後)


ここで、ご注意いただきたいのが、デメリットの『1』と『4』です。 特に治療の時期に関しては、まだ正しい知識が広まっておらず、『矯正治療は永久歯が全部生えてからでないと出来ない』と思われている方が少なくないようです。
結果、機能的矯正装置で簡単に治ったであろう症例でも、時期が遅かったために全顎の固定式マルチブラケットを装着しないといけなくなってしまうということが、しばしば見られます。そうなると費用もたくさんかかりますし、顎の成長が足らなかったり、ゆがみがあったりした場合、成長が止まってからでは治療が難しく、治しきれなかたり、抜歯が必要になってしまうことがあります。

また、『1』に関しては、せっかくいいタイミングで治療を開始しても、本人が装置を使わなければなんの効果もあらわれません。以下にあげますが、使えるようになるためには色々な方法や工夫がありますので試してみましょう。 ただ、性格的な向き不向きもありますので、どうしても使えない場合は固定式に切り替えることのもひとつと思います。当院では同じ治療目的で装置の種類を切り替える場合には、費用の追加はいただきません。
では、以下に『治療の時期』と『装置の使用時間』、その他『装置をつけない&つけられないお子さんの原因と対策』、また装置の取り扱いなど、各々説明していきます。


機能的矯正装置を上手に使うためのコツとポイント

1、機能的矯正装置の治療を始める時期

8~10歳位の永久歯が下の前歯4本、上2本くらい生えた頃
この8~10歳というのはあくまで、目安です。 歯の生え具合には個人差がありますので、前後2年くらいは人によって違うと思っておいたほうがよいでしょう。早い子は6歳くらいでも前歯4本生えている場合もあります。永久歯かどうかの判断が出来ない場合は少し早目から定期的に観察するのがベターです。 時期を外してしまって、永久歯が全て生えそろってからでは取外しの装置での治療は難しくなります。

2、使用時間
毎日8~9時間程度。(理想は14時間くらい)
基本的に寝るときにつけて使用しますので、子供ならたいてい8~9時間は寝ているので十分です。
もちろん、使用時間が長いほど効果が出やすいので、理想として14時間としています。これは、睡眠時だけでなく、晩御飯の後すぐ歯磨きをして装着し、そのまま宿題やTV、入浴などして就寝し、翌朝まで使用すれば、14時間くらいになるかと思います。 また、持続して使わないと効果がでにくいので、あまり着けたり外したりを繰り返すのは、例え合計時間が8時間を越えていても望ましくありません。ただし、装置に慣れず長時間持続して使うのが難しいうちは、少ししずつでも使って慣らしていくのも大切です。


3、装置をつけない&つけられないお子さんの原因と対策
取外し式の装置は患者さん自身が使わなければ一切効果が出ません。また、何日か使っても、その後何日も使っていなければ、せっかくの装置の効果も元に戻ってしまいます。もし、お子さんが装置を使えないようなことがあれば、なぜ使えないのか理由をつきとめて、どうしたら使えるようになるのか工夫が必要です。
以下に装置をつけない&つけれないお子さんの原因と対策をまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

●痛くて使えない
まずは、どこがどんな風に痛いのか聞いてみましょう

歯が痛い
→装置の効果が現れて、歯が動き始めるとき歯がむずむずする感じがあります。
お子さんによっては、それを痛いと表現する場合もあります。基本的にはそのまま使用を続け2~3日すれば歯が動ききって収まります。 まったく我慢できないくらいであれば、装置の調整を弱めることはできますので、来院してください。

歯茎が痛い
→どこが痛いのか自分でお口の中の痛い部分触ってもらって、状態を確認しましょう。歯茎に傷が出来ていれば赤くなっているか、白くなっているはずです。)装置の効果で歯が動いたり、乳歯の抜け替わりがすすんだりと、お口の中は日々変化していますので、装置が合わなくなってくることがあります。少し様子を見て、治まらないようなら、お口の変化に合わせて、装置を調整することも必要ですので、来院ください。

●つけるのを忘れる
使用時間のチェック表をきちんとつけることと、それを保護者の方が確認しましょう。それでも忘れる場合、寝る直前にする行動と抱き合わせにすると忘れにくくなります。例えば、寝る前に歯磨きするなら、歯磨き用のコップに装置を入れておく、パジャマに着替えると同時につけれるよう、パジャマの上にケースごと置くなどです。(保護者の方は所定の位置に装置があるか、また使っている痕跡があるか、時々、チェックしてください。)

●なんとなく気持ち悪くて出してしまう。
寝ているうちに口から出てしまう 使い始めの慣れないうちには、よくあることですので、根気良く続けることが大事です。装置に慣れるために起きているときにも少しずつ使いましょう。テレビやTVゲームなど、何かほかの事に集中しているときに装着すれば、装置から気がそれるので、慣れやすくなります。 口呼吸の癖があると、寝ているうちに口から出しやすいので装置に空気の通り穴をあけたり、専用のお口閉じテープを使うのも効果的です。
(トピックスバックナンバー 『ネルネル』お口閉じテープのススメ  参照)

        


●においや汚れが気になる(お手入れ法)
装置は基本的に流水と歯ブラシでこすり洗いで十分ですが、歯ブラシのこすりかたが足りないと、汚れが残って歯石になって落ちなくなったり、ばい菌が繁殖して臭くなったりしてきます。 まずはしっかりこすり洗いすることと、装置をつける前に歯磨きをしっかりしましょう(装置の汚れは歯の汚れが移ったものです。歯がキレイに磨けていれば装置は汚れません。)
どうしても汚れがとれなくなったら、医院の超強力な洗浄剤で時間をかければ、ある程度はキレイにできますのでお早めにおっしゃってください。 装置が汚れたり湿ったままにしておくと雑菌が繁殖して臭いが気になってくる場合があります。こすり洗いの時に愛用の歯磨き粉を使ったり、矯正装置専用の除菌洗浄剤も販売しておりますので使ってみるのもよいでしょう。(機能的矯正装置の素材は入れ歯やソフトタイプの装置と違い、歯磨き粉で擦っても問題ありませんが、逆に市販の入れ歯洗浄剤は成分が合わない場合がありますので避けてください)  またケースがよごれて臭いが出る場合もありますので、ケースもまめに洗いましょう。 ケースの中にキッチンペーパーなどを敷きっぱなしにするのは不衛生なので、あまりおすすめできません。ケースに入れるときは、よく水気をきって拭き、乾いた状態にするか、洗浄液に浸すかのどちらかにしてください。
ただし、熱には弱いので食器乾燥機に入れるのは禁止です。洗うときもぬるま湯くらいまでにしてください。

   
   <奥歯の部分に汚れのこびりついた装置>      

4、その他の注意点
最後に、そのほかの注意点についても少し述べておきます。 こういった取外しの装置の来院スパンですが、必ず2ヶ月に一回は来院しましょう。
きちんと装置が使えていれば、ほぼ2ヶ月あれば、最初に調整した分の歯が動いて、装置がゆるくなっているはずです。そうなると歯の動き具合にあわせて新たな調整を入れてやらないと、歯は動きません。 また、知らないうちに装置を踏んだりして歪んでしまう場合もありますので、おかしいなと思ったら、来院してください。ゆがんだまま使ったり、自分で適当になおしたりはしないでください。ゆがんだ装置をそのまま使っていると、歯並びがゆがんでしまう可能性があります。 保護者の方が忙しかったり、最近ではお子さん自身が塾や習い事で時間がとりにくかったりと、油断するとついつい来院がのびのびになってしまいがちです。
装置はきちんと調整しないと、いくら長い時間使っても効果がでなくなります。毎日忘れず使うことと、きちんと来院して調整を受けること、この2つが効果をあげるためのポイントです