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2014年 3月 知覚過敏を治そう!2 -進化する歯科材料-


さて、前回は知覚過敏の治療についてお話しましたが、今月はひきつづきまして、実際に使用する歯科材料のおはなしです。

専門的な材料のお話なんて聞いても良くわからないと思われるかもしれませんが、今回お話しする材料は少し特殊な性質をもっており、その効果をより引き出すためには患者さん側にも少し知っておいていただく必要があるのです。

前置きが長くなりましたが、ご紹介する歯科材料は、3M社の知覚過敏抑制材料『クリンプロXTバーニッシュ』。知覚過敏の抑制剤ですが、虫歯の予防にも使える優れものです。

2014年 3月 知覚過敏を治そう!2 -進化する歯科材料-

ペースト状の薬剤で専用の機械で光をあてると固まるタイプの材料です。

皆さんも歯科で、ピストルのような形やノズルのような形の光照射機を口に入れられて、青い光と共に10秒くらいで「ピー」という音が鳴って・・・、という経験がおありではないでしょうか。

2014年 3月 知覚過敏を治そう!2 -進化する歯科材料-

非常にスピーディに処置ができるというメリットがありますので、このタイプの材料は歯科ではとてもよく使われ、用途によって様々な種類があります。
このなかで、このクリンプロという素材はとても面白い特性があります。

特徴1:数ヶ月で磨耗・剥落してなくなる。

クリンプロは比較的サラッとしたタイプで、容器を押すと二種類のペーストが一定の割合で出てきますので、練り合わせて歯面に塗布し、光を当てて固めます。

2014年 3月 知覚過敏を治そう!2 -進化する歯科材料-

歯の表面をクリンプロで覆うことで、刺激から歯をガードし知覚過敏の痛みを抑えてくれます。
しかし、「せっかくガードしたのに無くなったらまた知覚過敏がでてしまうではないか!」とお思いでしょうが、この「数ヶ月」というのが肝心で、この期間にクリンプロはものすごくがんばってくれるのです。

特徴2:フッ素徐放性

クリンプロはその素材の中にフッ素を含んでいます。

先月お話しましたが、知覚過敏はなんらかの原因で歯のエナメル質が薄くなったり、象牙質がむき出しになったりして、外からの刺激が伝わりやすくなり歯の神経が過敏になって痛みを発します。
痛みの伝達を抑えるためには歯にフッ素を沈着させて歯質を強化してやるのが、長期的に見てもっと良い方法です(2月 知覚過敏を治そう!)

クリンプロはそれ自体が持っているフッ素、その他カルシウム・リン(これらも歯質を強化します)を徐々に放出し周囲の歯質を強化してくれます。(メーカーの情報では塗布部分の周囲2mmの範囲まで脱灰を抑制する効果を持つとのことです。)

このフッ素を徐々に放出する性質(フッ素徐放性)自体はほかの材料でも、虫歯の予防に使われるシーラント剤などによくみられるのですが、クリンプロの特性はそれだけではありません。

特徴3:フッ素のリチャージ機能

クリンプロはフッ素を放出するだけでなく、フッ素をリチャージする能力を持っています。
フッ素を放出するだけですと、持っているフッ素がなくなったら終わりですが、クリンプロはフッ素入りの歯磨き粉や飲食物に含まれるフッ素を取り込んで、放出し続けます。

ですので、クリンプロを使用した患者さんにお願いしたいのは、クリンプロががんばっている間に、積極的にフッ素を摂取してほしいということです。

フッ素入りの歯磨き粉でもいいですし(知覚過敏用の歯磨き粉には大抵フッ素が含まれています)、より効果が高いのはフッ素のうがい薬、また簡単なところでは、お茶にもフッ素は含まれています。(葉っぱのお茶なら紅茶でも緑茶でもウーロン茶でも可。ただし麦茶などの葉でないものやビワ茶など椿科以外の特殊な葉のものは不可)

さて、ここで話は戻りますが、「だったら、やっぱり数ヶ月しかもたないのはどうよ?」と思われる方もおられるでしょうが、これこそがクリンプロのもっとも素晴らしい点だと思うのです。

先月知覚過敏の痛みを抑える治療のくだりで、プラスチックで歯面をがっちり覆うことのデメリットを書きました。(4.なぜ、最初から効果の高い処置をしないのか?)
クリンプロも充填用のプラスチックほどではありませんが、刺激を遮断するためにそれなりの厚みがあります。また知覚過敏の部位は触ると痛い場合が多いので、細かい作業が難しく多少歯ぐき側にはみ出す形になることもあります。(ですので、クリンプロを使用した患者さんにもうひとつのお願いは、その周囲を丁寧に磨くことです。クリンプロで虫歯の予防は出来ても歯周病は防ぐことはできません!

だからこそ、クリンプロでガードしている数ヶ月の間に、知覚過敏の原因(磨き癖や酸蝕など)を改善し、過敏になった神経の安静を保ち、フッ素で歯質を強化した後、役目を終えたクリンプロは自然になくなっていくのです。

あくまで、できるかぎり天然の歯を尊重してこそ、からだに優しい治療ではないでしょうか?